紙の名刺に埋もれた“見込み客”、デジタル化で発掘へ――レイスグループの“新規開拓”が激変したわけ:1回のメールで100件のアポが(2/2 ページ)
名刺のデジタル化と共有の効果は、業務の効率化だけではない。活用範囲を一歩広げることで、「売上アップ」や「営業力強化」につなげられるケースもある。名刺のデジタル化でその取り組みに成功したレイスグループの活用法を聞いた。
当初、所在地や業種、役職などからピックアップした約770枚の名刺に対して一括メールを送信。そのメールに対する返信は270件あったという。その返信のうち、実に100件がアポイントにつながった。電話によるアプローチなら500時間分に相当する成果だ。さらに、この100件のアポイントは、結果的に10件を超える受注にも結びついたそうだ。
伊東氏は以前、こうした一括メール配信を、他のSFAのクラウドサービスやExcelデータなどをベースに試みたことがあったが、いずれもフィルタリングや配信作業に多くの手間がかかり、期待していたほどの効果も得られなかったという。Sansanのメール一括配信機能を使った再度の試みは、「成功だった」と評価する。
システムと工夫で成功へ
もちろん、より多くの返信をもらえるよう、一括送信する際のメールの内容にも独自の工夫をこらしている。
「受け取った人が、単なるスパムや一方的なメールマガジンだと思ったら最後、メールは読まずに捨てられてしまうので、文面は営業色が強くなりすぎないように配慮しました。また、Sansanのメール配信機能では、メールの差出人名とアカウントを、その名刺を実際に交換した担当者のものにすることができます。一度でも、直接会った担当者の顔が見えるメールであれば、そうでないものより反応は良くなります。あくまでも、会社からの一斉配信ではなく、個人からのメールとして読んでもらえるように工夫できたのです」(伊東氏)
伊東氏は、1件あたりのアポイントを獲得するのにかかる営業コストという観点からも「郵便によるダイレクトメールや、テレフォンアポイントなどに比べて、名刺データを活用したメール一括配信は圧倒的に効率が良い」と評価する。現在では、メール一括配信に対するリアクションで、年間約1000件のアポイントを獲得できているという。
リスクもある「メール営業」を効果的に行うために必要なこと
レイスグループでは、名刺管理デジタル化の目的を「業務効率の向上」「データ共有による営業支援」に定め、名刺データを「一括メール配信」のために活用することで、「アポイントの獲得」や「受注件数の向上」といった具体的な成果に結びつけた。今後も、社内での利用範囲を広げつつ「売り上げに貢献する名刺管理ツール」としてSansanの活用を進めていきたいとしている。
もっとも「一括メール配信」という手法には、濫用すれば受信者側で不躾なスパムと判断されてしまい、結果的に見込み客を失いかねないリスクもある。そのため、事前の配信先と送信内容の吟味が極めて重要だ。
メールを営業ツールとして効果的に使うためには、配信先データを属性情報も含めて管理するデータベースの品質と、その中からターゲットとなるデータを適切にピックアップするための機能が必須であり、その点、Sansanの機能は「使いやすい、十分なものだと感じている」と伊東氏は言う。もちろん、実際に送るメールの内容そのものも、受け取った相手が興味を持つものでなければならないのは当然だ。
レイスグループの例は、データの品質管理、正確なフィルタリング、メール内容の吟味と適切な配信という複数の要素がうまく機能することで、「名刺データ」を「アポイント獲得と売り上げの向上」という結果に結びつけることができた興味深いケースと言えるだろう。
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