店舗や営業だけが利益を生み出すという誤解と悲劇:事業のヒント
営業部が花形といわれていた時代がありました。そして今でもその考えを受け継いでいる企業があり、会社内での格差を引き起こしているようです。
直営店を幾十も展開している社長からこんな話を聞きました。
経営コンサルタントに「100店舗を目指すため、何に投資をすればいいだろうか」と質問したところ、「本社はお金を生まないから、最低限の機能があれば充分。本社にはお金をかけるべきでない」と言われたとか。
そのコンサルタントの発言をそこに居合わせたがゆえに聞いた社員たちは、すっかりやる気をなくしてしまい、社長としても「本社はお金を生まない、本社は店舗の足を引っ張っている」という考え方はどうなのだろう、と疑問を抱いてしまったとのことでした。
それならこうするのはどうでしょうか。「本社にもお店を開設しましょう!」
本社の1階を店舗に改装してバンバン売れば、本社もお金を生み出しますので、これで何ら臆することはなくなります!……というのは冗談です(笑)。
確かに本社は販売しているわけではないので、そこだけ考えたらお金を生んでいないように見えるでしょう。だからといって店舗と本社を売上だけで比較するのはナンセンスです。
本社があるから店舗は今の売上があるわけです。本社がなければ各店舗で本社機能を持たなければなりません。そうするとどうなるでしょうか。既存の人員を割り当てれば売上は落ちますし、人を雇えば経費が増えます。無理に回そうとするとミスやトラブルが起こり、大きな損害を出すかもしれません。どう転んでもマイナスにしかならないのです。
決してその店舗だけで売上を出せているわけではないのです。
花形だから特別扱い?
同じようなケースですが、一昔前に花形、と言われていた営業部を抱え、得意気になっている会社がありました。営業がひいきにされ、給与面の待遇も異なっていました。営業だけが基本給プラスたっぷりの歩合給。ほかの部門は売上を出しているわけではないから基本給のみ、といった具合です。
今もそういう体質の会社が残っているのかもしれませんね。心当たりはありませんか?
なぜこんな差別が生まれるかというと、お金を生むのは営業部、そのほかの部署はお金を生まないという考えだからでしょう。おかしいと思っていても、お金を生まない部署だから誰も何も言えず、さらに営業が幅を利かせている会社も多くありました。
しかしその考えは間違いです。売上は営業だけで生み出しているのではなく、会社全体で生み出しているものです。ここを勘違いしてはいけません。
もし総務や経理や管理部門など「お金を生まない」と考えられている部署が全部なくなり、営業部だけになったら会社はどうなるでしょうか? すぐに今までの売上は出せなくなり、会社として機能しなくなってしまいます。
だから、営業部だけが特別扱いされて、歩合給をもらうなど良い待遇を受けているのはおかしいのです。もちろん、「総務があるから、あなたたちは営業に専念できるのよ! 総務は偉いんだからっ!」という話でもありません。
本社が上で店舗が下、営業部が上で経理が下など上下関係はないのです。それぞれの部署には役割があり、それらが全部機能して企業として成立し、お客さんが集まって売上が上がってくるのです。
悲劇は食い止められる
これを理解したある会社はこれまでの考えを撤廃し、営業の歩合給を完全に廃止しました。不満を持った営業のトップクラス数人は辞めてしまいましたが、それにもかかわらず、会社全体の売上は落ちなかったのです。そしてその後も業績は右肩上がりを続けています。
営業が鼻高々になっている会社は、その営業パワーで業績を上げられるかもしれませんが、いずれ限界が来ます。天狗のような鼻になると難しいので、その前に方向転換した方がいいかもしれませんね。
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