伝わるプレゼンは、「事実」と「感情」を混同させない:表現のプロが教えるスピーチの兵法(1/2 ページ)
決して嘘を話しているわけではないのに「あの人の話は大げさで紛らわしい」「聞き流しておこう」と思ってしまうようなスピーチに心当たりはありませんか? そんなプレゼンには、「使ってはいけない言葉」が含まれていることがあります。
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本記事は企業実務のコンテンツ「表現のプロが教えるスピーチの兵法」から一部抜粋・編集して掲載しています。
先回は、話し方の演出に欠かせない「声の高さ」と「話す速度」を取り上げましたが、実際にこれらを意識して話してみましたか? 周囲の反応はいかがでしたか?
事実のみを話すことの大切さと難しさ
今回は言語情報についてお話します。
私は、人から信頼されるための話し方「正統派スピーチ」をお勧めしていますが、正統派スピーチにおける言語情報は「事実のみ」話すことを重視します。
私たちの表現は、何を話すかという「言語表現」と、どのように話すかという「非言語表現」に分かれます(言語・非言語についてはこちらをご参照ください)。
そして、何を話すかという「言語表現」では「事実のみを話す」のがとても重要です。
ここで、「ビジネスに嘘はあり得ないから、『事実を話す』なんて当たり前のことでしょ」と思った人もいるでしょうし、「事実を話せばいいのだから簡単だ」と思った人もいるでしょう。
しかし、注目したいのは「事実のみ」というところ。すべての内容を正確に伝えることは、思いのほか難しく、かなり意識しないとできない行為です。
例えば、次の例文で「事実のみ」の内容から逸脱しているのはどの部分でしょうか?
最近、社内の幅広い世代の社員より挙がっていた、たくさんの意見を参考に、新しい経理管理システムを導入しました。システム構築にはおよそ2年もの月日がかかりましたが、やっと完成し、かなり良いものになりました。
ヒントは、事実のみの内容にするため、まず「ぼかしの言葉」と「評価の言葉」を削除することです。どの表現が「ぼかしの言葉」と「評価の言葉」なのか、線を引きながら探ってみてください。
事実をあいまいにすると信頼性が低くなる
一緒に考えていきましょう。
まず「ぼかしの言葉」とは、事実をあいまいにする表現で、例文では「最近」「幅広い世代の社員」「たくさんの意見」「およそ2年」が該当します。こうした言葉は削除しましょう。
そして、可能な限り、これらの表現を具体的な内容にします。「ぼかしの言葉」の代わりに、人数、年齢、金額などの数字や、地名、人名、会社名などの固有名詞を使うのです。
「最近」は「3年前から」、「幅広い世代の社員」は「20〜40代の社員」、「たくさんの意見」は「203件の意見」、「およそ2年」は「1年10カ月」などと言い換えましょう。
「203件」は「約200件」とせず、1ケタの数字まで事実として伝えます。その3件を切り捨てることなく正確に伝える姿勢が信頼につながるのです。
「約○○○件」「○○○件を超える」などと、まとまりよくして相手に伝えていないかどうか、改めて自分の話し方を見直してみてください。
ちなみに、「ぼかしの言葉」の削除は、ニュース原稿の書き方の基本でもあります。
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