なぜ弥生会計の中の人はTwitterでユーザーに“絡み”まくるのか?:「艦これ」「アイマス」も必須知識(2/2 ページ)
「開業届ってどう出すの」「確定申告、いつまでだっけ」――そんなTwitter上のツイートを見つけて“絡んで”くるツイッターアカウントがある。SNS時代の新しいユーザーサポートの形を「中の人」に聞いた。
「失敗して炎上するんじゃないか」という恐怖
2014年秋、弥生はアクティブサポートをさらに拡大し、カスタマーセンター業務の1つとなった。その基礎となっているのは、吉川氏や上原さんらマーケティングチームの蓄積だ。ところで、彼らにSNSに対する抵抗感はなかったのだろうか。
やはり「失敗して炎上するんじゃないか」という雰囲気はあったという。その恐怖心を取り除くためにも、SNSのリスクマネジメントに詳しいループス・コミュニケーションズの協力を得てソーシャルポリシーを策定した。
ただし、ポリシーによって何でもかんでも禁止するのではなく、どんどん使っていこうという方向性を打ち出した。「社長からも『やってみなきゃ分からないよ』といわれていましたし、SNSに対してポジティブであり続けることで会社組織そのものも変えていけると思ったのです」(上原さん)
「圧倒的にポジティブな反応が多いので、やりがいはすぐに見いだせます。ネガティブなコメントを書かれても反省点としてポジティブに受け止めれば大丈夫です。」(吉川氏)
ユーザーからのポジティブな反応は、「今週のありがとう」として社内で共有しているそうだ。従来のカスタマーサポートでは「操作が分からない」といったネガティブ要素が強い相談が多いため、ユーザーの感謝が見えにくくストレスのたまる業務でもあった。アクティブサポートを行うことで、世間一般からの評価を可視化できるのは大きなメリットだ。
一方、ネガティブなコメントに素早く反応して適切に処理することは、レピュテーション(評判)リスク対策としても有効だ。
消費税が8%に上がる前、あるTwitterユーザーがちょっとした誤解から「弥生のエンジニアはバカなのか」という趣旨のツイートをした。このツイートがリツイートされて広がっていることを、岡本社長は葬儀のために新幹線で移動中に発見した。しかし、詳細を説明するには時間的にもTwitterという文字数の制約からも難しい。
そこで、まずTwitterで誤解を解き、できるだけ早い段階で説明のためのブログを公開すると約束した。実際に書いたブログは長文となったが、その後ツイート主とは建設的な議論を交わすことができたのだ。この対応はまとめサイトにも記録されている。
中の人に求められるのは会計知識だけではない
ほかにもアクティブサポートを通じて得たさまざまなエピソードが聞けた。最後に、そのうちのいくつかを紹介したい。
東日本大震災によって被害を受けた陸前高田市で、復興支援のために仮設の商店街をボランティアで運営するTwitterユーザーがいた。「弥生会計の使い方が分からない、だれか助けて」――そんなツイートをみた「弥生のヨシ」が積極的に“絡んで”いった。実際に困りごとそのものは電話で話すことで解消したのだが、その後、中の人が現地を訪問。今でも弥生の社員が東北に常駐して復興支援の支援に当たっている。
あるとき「弥生ゲット」というツイートを見つけた。反応してみると、実は「艦隊これくしょん(艦これ)」というゲームに登場する駆逐艦をイメージしたキャラクターのことだった。だが、「弥生のヨシ」は、このツイートに対して「鎮守府の守りも業務も『弥生』にお任せください」とツイート主の発言に乗っかる形で絡んでいる。
「『弥生のヨシ』の中の人を続けていると、会計知識だけでなく、艦これやアイマス※も必須知識になるんです(笑)。いつかコラボできるといいですね」とは吉川氏のコメントだ。
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