3. メタデータ
メタデータとは、データについてのデータのことです。Evernoteの「ノート」がいつ作成されたか、いつ編集されたか、スマートフォンで作成されたならばその緯度・経度など、どのような情報なのかの付加情報が記録されています。メタデータは通常、自分で作成するものではありません。しかし意識して使うことで、情報の引き出しをより効率化できます。
Evernote のノートに付加された緯度、経度の位置情報にもとづいて、ノートが作成された場所を地図上にピンで表示した様子。こうした機能を使えば、膨大なノートを「あの場所で去年記録した情報」といったように絞り込める
例えばEvernoteのスマートフォンアプリを使えば、地図上に「ノート」をちりばめて表示することができます。ここに作成日のメタデータを用いて絞り込めば、「3年前の旅行先での発見」だけを表示することが瞬時にできます。
4. 「保存された検索」と「関連するノート」
ノートブックやタグ、そしてメタデータは情報を探しやすくしますが、情報を探している時には最終的にEvernoteの検索機能を多用することになります。ここでもいくつか、デジタルならではの機能が存在します。
まず「保存された検索」という機能はよく利用する検索文字列を登録しておき、いつでも呼び出せるようにしてくれます。いわばすべての情報カードの索引が常に更新されている状態ですので、繰り返し探す情報への近道となります。
検索機能には、これまでに挙げたノートブック、タグ、作成日などで絞り込む方法もありますので、特定の話題やある期間で常に情報を絞り込むということもできます。
検索に似ていますが、Evernoteのノートとノートの関連性を自動的に表示してくれるのが「関連するノート」という機能です。特定のノートを開くと、その下部にノートの内容や画像などに基づいて推測された関連性の高いノートが自動的に表示されます。
情報カードを繰って関連性を探すのは手動でしたので、手間も記憶力も必要でしたが、Evernoteのノートはあらかじめそうした関連性の候補を絞り込んでくれているのです。これはノートの数が数千、数万になってくると次第に効果が高まってきます。
やや細かい機能ですが、Evernoteにはクラウド上で同期されたノートに一意のURLを発行して、ノートとノートとの間にリンクを作成することもできます。Evernote内で索引や目次、あるいはWikiのようなページを作成することもできます。
情報カードに表題や日付を書いたのと同じように、Evernoteにおいても情報に最低限の構造を与えておくことによって、インプットされた情報が格段に利用しやすくなるのです。
紙のノートや情報カードならば、自由にページを繰り、並べ替えて情報のつながりを見出すことが可能です。Evernoteにはいまのところそこまでの自由度はありませんが、そのかわりに検索の妙味があります。
キーワードによる検索が膨大な「ノート」の中から同じ文字列を持った情報を瞬時に引き合わせてくれますし、今のEvernoteには「関連するノート」を類推して表示する機能もあります。
また、同じタグをつけたノートが、偶然のつながりを浮き彫りにしてくれることもあります。例えばまったく個別のタイミングで「面白い」というタグをつけたノートが、まったく異なる分野の面白いと思った事実を引き合わせてくれるといったようにです。
紙のノートに表題や索引をつけるのと同じように、ここでもEvernoteが持っている最低限の構造を利用することで、インプットされた情報が利用しやすくなるのです。
著者プロフィール:
堀正岳(ほり・まさたけ)
1973年アメリカ・イリノイ州生まれ。理学博士。北極における温暖化の影響評価と海洋観測を中心とした研究活動をするかたわら、「ライフハックは人生を変える小さな習慣」をテーマに最新のライフハックや仕事術、ツールなどをブログ「Lifehacking.jp」で紹介。Evernote ライフスタイル アンバサダー。ScanSnapアンバサダー。著書に『できるポケット Evernote 基本&活用ワザ 完全ガイド』(共著)ほか多数。
まつもとあつし
1973年大阪府生まれ。ジャーナリスト・プロデューサー。ASCII.jp、ITmedia、ダ・ヴィンチなどに寄稿、連載。万博公園・民博のそばで生まれ育つ。著書に『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程・DCM修士。
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