部下にうまく仕事を“催促”する、たった1つの方法:そのひとことを言う前に(1/2 ページ)
仕事を頼むとき以上に、相手に“催促”をするのは気を使うもの。日常生活でもそうだと思います。言った相手のモチベーションを下げないよう、“相手の状況をくんだ表現”で伝えたいことをしっかりと伝える姿勢が大切です。
連載「そのひとことを言う前に」
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
仕事を頼んだのに、忙しいせいか相手がなかなか動いてくれない――。ビジネスでは、こんなシーンに遭遇することも多いと思います。そんなときは相手に“催促”をするわけですが、催促時のコミュニケーションというのは、仕事を頼むとき以上に難しいものです。
例えば、あなたが部下や後輩に、顧客へメールで報告書を送るよう指示したとしましょう。「この報告書、今日中にA商事のBさん宛てにメールしといてくれる? Ccに私を入れてくれればよいから」
報告書はすでにできているので、メールに添付して送るだけ。しかし次の日に確認すると「まだ送っていません」という答えが。さて、あなたは何と言いますか?
a)え、まだなの? メール。報告書送るだけじゃん。
b)まぁ、手の空いたときでいいけど……(でも早く送ってよ)
c)今日中って言ったよね。なんで送ってないの?
d)まだなのね。お客さんを待たせることになるから、すぐに送って。
e)待っていたんだけどね。まぁそれはいいけど……(終了報告、待ってたんだけど?)
今回挙げた5つの例の中では、d以外の4つは効果が上がりにくいでしょう。仕事を離れ、日常的なシーンを思い浮かべると、直感的に分かりやすいかもしれません。
レストランでなかなか出てこない食事を催促するときに、「いつ出てくるの!?」と店員を問い詰めても効果は薄いでしょう(もちろん例外もあります)。それよりも「まだ来てないので、早く出していただけますか?」や「13時にはここを出たいんです。間に合うメニューに変えてもらえますか」などと言ったほうが、少なくともコミュニケーションはスムーズで生産的なはず。これは仕事でも同じです。
相手のパフォーマンスを低下させるコミュニケーション
人のコミュニケーションスタイルは、大きく分けると3つの要素に分けられます。攻撃的に自分の思いや考えを伝えるアグレッシブ(Aggessive)、自分の考えを押し殺し、相手に合わせる消極的なノンアサーティブ(Non-Assertive)、そして相手の状況をくんで主張するという意味を持つアサーティブ(Assertive)です。
先ほど挙げた例では、aとcがアグレッシブ、bとeがノンアサーティブに当たります。一般的にこの2種類のコミュニケーションは、ことビジネス上ではよしとされません。相手のパフォーマンスが下がりやすくなってしまうためです。
アグレッシブな言い方をすると、相手は恐怖や戸惑いを感じます。相手が「自分に非がある」と自覚している場合はなおさらです。結果的に相手の心が離れて、協力が得られなくなったり、反抗されたりしてチームの崩壊につながることすらあります。これは避けたほうが良いでしょう。
一方、ノンアサーティブな言動だと、その場は収まりますが、根本的な問題は解決していません。また同様の展開になる可能性が高いのです。こうしたコミュニケーションが多い人は、本音を言えずに言葉を濁す“察してちゃん”です。自分が我慢すればよい、自分がNOと言うことで相手の気分を害したくないと考える優しく臆病な人が多いのです。
不可能な納期にも関わらず、断れずに「できる」と言ったり、嫌なのに「いい」と言ってしまうことがしばしばあり、納期が遅れて顧客やチームに迷惑をかけたり、自身も“分かってもらえなかった”“私ばっかり我慢した”とストレスがたまりがちになるなど、誰も幸せにならない結末を迎えてしまいます。
もし自分の周囲にそんな人がいたら「はっきり言ってくれた方が親切だよ」と、優しく伝えてみて下さい。はっきり言っていいとOKをもらうことで、勇気が出てコミュニケーションがスムーズになるケースもあります。
では最後の1つ、アサーティブなコミュニケーションとはどういうものなのでしょうか。
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