なぜ週に1日くらいは「中断ゼロの日」を作るべきなのか:ビジネスチームハック
「仕事に集中したいんだ!」と思っていても、私たちはさまざまな理由で仕事を中断させられます。なぜ会社は「会議なし、他人からのメッセージも一切受け取らない」という日を作れないのでしょうか?
私たちは仕事を中断され過ぎます。これは何度も目にするし耳にする話です。筆者が子供だったころでさえ、週刊誌には「電話による中断で仕事に集中できない」という特集が組まれていた気がします。
今日はもっと中断される機会が増えています。メールはもちろん、社内外を問わずさまざまな「メッセージ」がいたるところから舞い込んできます。しかも私達は能動的にメッセージを取りにいってもいます。何もしなくても「通知」されまくるにもかかわらず、やっぱり自分からチェックしてしまうのです。
これでは、一日中誰かとひっきりなしに会話し続けているのと同じこと。せめて週に1日くらいはメッセージを遮断できる日を設けたいもの。自分の時間ができて仕事に集中できますし、ストレスも減るでしょう。いいことずくめのはずです。
「生産性強化デー」導入の是非
会議やオンラインでのミーティング、電話やメールをシャットアウトすることによって生産性が上がったという話も、そこかしこで耳にします。事例はたくさんありますが、それを読んで「うらやましい」と感じるだけではもったいないと思いませんか?
「ハーボードビジネスレビュー」2015年2月号(参照リンク)に、「時間管理はチームでこそ効果が上がる」という特集記事が掲載されていました。
この記事中でもやはり、「オフィスにいて邪魔が入る」「予定外の話し合いに巻き込まれる」といったことが課題とされていました。そこで解決策として「生産性強化デー」を採用。それが「チームに熱狂的に支持された」というエピソードが盛り込まれていました。
「生産性強化デー」というのは、「まったく会議を入れずに在宅勤務にするというタイムオフ目標」であり「その日は電話会議やバーチャルミーティングなどもすべて禁止」というものです。トリンプの「がんばるタイム」とも共通するアイデアです。
筆者がとても不思議に思うのは、「どうして会社はこのような取り組みを実行することがそんなにも難しいのか」ということ。
全社員が絶え間なく電話やメールに対応したほうが、会社にとって都合がいい理由があるのでしょうか? そこがサポートセンターならば分かりますが、どうしても「効果はあると思うが、実際の導入となると難しい」という反対意見が出てきます。
集中できないと分かっている環境では、人は集中できない
人は「どうせムダになる」と分かっていることを敢えてやろうとする意欲を持たない動物です。経済心理学者のダン・アリエリーがレゴブロックを使った実験をしました。
組み立てたレゴブロックを目の前でバラバラにされるのを目にすると、その人はレゴブロックを組み立てる意欲が失われていきます。では、組み立てるたびに報酬をもらえるとしたらどうでしょうか? それでもやはり目の前でレゴが壊されていく条件では、人はレゴブロック作りをすぐにやめてしまいます。
何に取り組むにせよ、エネルギーを注ぎ込まなければできないようなことをするには、そうするだけの意味がほしいというのが人間のようです。単にお金がもらえるというだけでは、モチベーションが維持できないのです。
集中して仕事をするというのは、意義のあることかも知れません。だから集中する気になるわけです。しかし、集中してもすぐ邪魔が入るのが分かっていれば人は最初から集中しようとしなくなるでしょう。筆者には、このことが「集中できない環境」におけるもっとも致命的な問題だと思っています。
筆者:佐々木正悟
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
TwitterID:@nokiba
Facebook:佐々木正悟
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