2月22日、JR東日本、NTTドコモ、ソニーの3社が合同で「モバイルSuica」の記者会見を行った(2月22日の記事参照、記事1/2)。会見には、3社の社長が顔を揃え、それぞれの「新しいビジネス」においてモバイルSuicaが重要であると強調した。
以前このコラムでも書いたが、おサイフケータイのニーズとして最も大きいのは「駅で使いたい」という声である。現在カード型で提供されているJR東日本のSuicaとJR西日本のICOCAはFeliCa最大のアプリケーションである。また、電子マネー分野で見ても、JR東日本の駅中心で展開するSuica電子マネーの方が、全国展開するEdyよりも、1店舗あたりの利用率で勝っている。
人は移動しながら生活する。そう考えると、決済サービスのような生活インフラへの新しい試みは、公共交通と店舗決済を人の移動軸に沿う形でカバーした方がいいだろう。電車・バスなど交通機関を利用する“ため”にチャージしたお金が店舗での支払い“でも”使える。あくまで主体は交通利用にした方が、人間の感覚にマッチする。
すでにカード型で成功している日本のSuicaはもちろん、香港のオクトパスカードなど海外の事例でも、成功の要因は「交通+電子マネー」のセットモデルである。
今回、おサイフケータイをはじめとするFelica携帯が手にしたモバイルSuicaは、紛れもなく「都市部のキラーサービス」である。2006年1月以降、東京圏でおサイフケータイの利用率が跳ね上がるのは間違いない。
しかし、地方はどうするのか。
JR東日本は、すでに電車の乗り降りで「ICOCA」と連携中であり、JRグループ他社からの申し入れがあれば積極的に協力すると表明した。だが、残念ながら、JRはじめ鉄道各社は、地方において重要なプレーヤーではあるものの交通の主役ではない。地方では、「鉄道・バスなど公共交通機関と自動車移動の比率は3:7程度」(森川高行・名古屋大学教授)であり、市民の鉄道依存度は東京・大阪と比較にならないほど低い。
おサイフケータイは、モバイルSuicaによって都市部の鉄道移動を軸とするニーズを確保することができた。今後、全国規模でのニーズ喚起を睨んで重要になるのは、クルマを移動軸とするロードサイドビジネスへのおサイフケータイ進出だろう。特にクルマの「利用料」にあたるガソリンスタンドへの展開は重要だ。
公共交通とクルマの両方で、「交通+電子マネー」のセットモデルを作ることが、全国規模でおサイフケータイのニーズを高めるために必要である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング