ACCESSは2月14日、スペインバルセロナで開催中の「3GSM World Congress 2006」にて、同社初となるOS「ACCESS Linux Platform」(ALP)を発表した。昨年のPalmSource買収により獲得した技術を取り込んだもので、Palmアプリケーションを完全にサポートするという。SymbianとWindowsが競合するモバイルOS市場で、「オペレータや端末ベンダーに新しい選択肢を提供する」と同社は意気込みを見せた。
PalmSourceの買収で業界を驚かせたACCESSは、今後、既存のNetFrontブラウザ事業と今回発表したOS事業の2つの柱で展開する。OS事業では、Nokiaなどの大手端末ベンダーの出資を受ける英Symbianが大きなシェアを占め、その後を米Microsoftが追っている形だが、その中に参入することになる。ACCESSの取締役副社長兼CTO(最高技術責任者)の鎌田富久氏はALPが狙う市場として、無線機能を持つPDAタイプの端末、スマートフォンの2つを挙げる。同社がNetFrontで築いたオペレータや端末メーカーとの関係を活用したい考えだ。
Linuxに路線変更したPalm OSの進化形と同社が説明するALPは、これまでのモバイル向けLinuxの欠点とされていた複雑性を緩和することを目指す。それにあたり同社は、Linuxカーネル(2.6.12以降)をベースに、アプリケーション層で事前にある程度統合済みの独自技術「MAX」を載せる。これにより、Linuxの柔軟性を活用しつつ、開発の複雑性を緩和できるという。SymbianやWindowsは対応できなかったライセンスコストの問題、カスタマイズへのニーズに答えられると同社は見ている。
このMAXでは、GUI開発のオープンソースライブラリGIMP ToolKit(GTK+)、データベースエンジンSQLiteなどのオープンソース業界でよく用いられているコンポーネントを活用しており、オープンソースの革新性を取り込むことができる。
同社がこの日、もう一つ強調した点は、Palm開発者やオープンソース開発者への取り組みだ。エミュレータの提供により、既存PalmアプリケーションはALPでも動作するようにするため、既存の投資を保護でき、MAXが提供するアプリケーションラウンチャなどの機能により、GTKなどのLinux APIを活用できる。
同社のプロダクトマーケティング担当副社長、ディディエ・ディアス氏によると、「Palm開発者は42万人を数え、うち3割がエンタープライズアプリケーション分野」という。同社は今回のALP発表を受けて今後SDKを提供、コミュニティ活動を強化する。すでに、OSDL(Open Source Developers Lab)のMobile Linux Initiative(MLI)、2005年に立ち上がった業界団体Linux Phone Standards(LiPS) Forumなどの団体に参加しているほか、Open Binder Project、YAFFS(Yet Another Flash File System)のLinuxバージョンの開発などで貢献を行っている。
今後の予定としては、年内にALPのライセンスを開始し、2007年には最初のALP搭載端末登場を見込んでいる。すでに日本をはじめ世界レベルで、複数のベンダーやオペレータと話を進めており、市場参入への感触は「かなり良い」と鎌田氏は語る。日本市場でも、既存および新規参入キャリアにアプローチしているといい、「高い関心を示していただいている」と鎌田氏は述べた。
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