NECの矢野薫社長は5月29日に都内で開いた経営方針説明会で、松下電器産業と携帯電話端末事業の提携について「具体的な検討に入ることで合意した」と明らかにした。内容は「まだ言える段階にないが、そう遠くない時期に発表できると思う」とした。
不振の携帯電話端末事業をめぐり、松下と米Texas Instrumentsらと合弁会社と設立すると一部報道が伝えた(関連記事参照)。矢野社長は携帯端末事業の回復を「必ずやり遂げる」と公約しており(関連記事参照)、一方のパナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)も赤字転落からの回復途上にある。
矢野社長は提携について、「具体的な検討をすることで合意した、という段階。まだ何も決まっていない」とした上で、「ただ、両社で検討に入る以上は成功すると思ってやる、ということ」とスキーム案は持っているとした。
両社は2001年、3G端末の共同開発で提携しており(関連記事参照)、現在もソフト開発での協力は続いている。今回はさらに踏み込んで開発の共通化や部品の共同調達も視野に入れる。コスト削減やスケールメリットの発揮で、端末事業の競争力を回復・強化するのがねらいだ。
MM総研によると2005年度、国内市場シェアはシャープが初めてトップに立ち、かつて最大手だったPMCとNECはきん差ながら後塵を拝した(関連記事参照)。矢野社長は「まず国内で勝つということ。国内でスケールメリットをいかし、技術開発の原資を得る必要がある」と話し、海外市場の強化はその延長にあるとの位置付けだ。
ただ、矢野社長は「事業統合ではないと思う」とも話す。「松下側と合意しているが、携帯電話はユビキタス時代のインタフェースとして10年後も生き残る商品。NECはネットワークから、松下は家電から、という見方の違いはあるが、今は両社とも手放したくない」からだ。
このため、提携後も両社は現行ブランドでそれぞれ展開する方針。矢野社長は「両社のブランドに対する期待は違う。統合して、松下とNECのブランドが分からない製品を出すことで現状より改善するとは思わない」とブランド統合を否定した。
提携交渉では、両社のブランドをいかしながらスケールメリットも発揮できるようなスキームを模索していく。矢野社長はあくまで例としながら、「開発のほとんどを共通化し、最後にNECらしさ、松下らしさの部分を出せれば開発コストを減らせるのでは」というアイデアを挙げた。
だが「具体的には何も決まっていない」のが現状という。「あらゆる可能性を排除しない。決まっているのは、今より良くするということだ」
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