フリースケールは、日本の端末メーカーに対して、プラットフォーム型チップの「MXC300-30」を提案している(3月7日の記事参照)。これはベースバンドチップ(DSP+CPU)とアプリケーションプロセッサ(CPU)を統合し、ビデオ機能やカメラ機能I/Fなども搭載されており、1チップに現在の携帯電話に必要な機能のほぼすべてが実装されたものだ。
「MXCではアプリケーション側と伝送系がそれぞれのコアに分かれる構造になっていて、その上で共有メモリーが使えるようになっている。処理速度を落とさず、低コスト化ができるのが特徴です。さらにベースバンドとアプリケーションプロセッサに異なるコアを実装することも可能です。また無線部分も(端末の)用途に応じて変えられるので、非常にスケーラビリティが高い」(友眞氏)
ベースバンドチップとアプリケーションプロセッサの1チップ化では、生産効率の向上・低コスト化と引き替えに、プラットフォームそのものの柔軟性は減少する。必要のない性能や機能を省いたり、仕様を変更することは難しいのだが、MXCでは他の統合型チップに比べて容易に仕様変更ができる。MXC300-30では従来型に比べて約30%コスト削減を謳うが、「コストよりもメリットが大きいのは、開発期間の短縮やソフトウェアリソースの利用効率が高くなるところ」(友眞氏)だという。ここは日本メーカーが苦手とする部分でもある。
「中長期的に見ると、国内市場と海外市場の違いは次第に小さくなると予想しています。海外メーカーが日本市場に入ってくることで、国内でも今後は低コスト化の圧力が高まる。端末を安く作ることは、国内市場向けでも必要になってくるでしょう」(友眞氏)
今年は番号ポータビリティ制度(MNP)の年であり、携帯電話キャリアはそれに向けて準備を進めている。さらに今後を視野に入れると、FMCといった新たな領域も話題になり始めた。半導体メーカーは、MNPやFMCにどのような視点を持っているのだろうか。
「我々はMNPがあり、その結果としてFMCが推進されると考えています。そして、ここはフリースケールにとってチャンスでもあります。
MNPが始まれば、ユーザーはよい端末やサービスがあるキャリアに移動するようになる。その中でマルチメディアコンテンツの重要性が高まるでしょう。また汎用OSの必要性も高まる。これらの分野でフリースケールはノウハウを持っていますので、(他の半導体メーカーに対する)競争力になるでしょう」(友眞氏)
さらにMNPでコンテンツのリッチ化が起これば、それが引き金になってMNPも動き出す、と友眞氏は指摘する。
「携帯電話で扱うコンテンツはリッチになりますが、どこかの時点でキャリアのインフラが耐えられなくなる。固定のブロードバンドなど他のメディアとの連携が必須になっていく。ここで重要になるのがWiFiとデジタル放送です。我々はマルチメディア対応で、かつ低消費電力のOFDM技術を持つ会社を買収しまして、この分野の技術も獲得しました。これらも将来のMXCシリーズに組み込まれていくでしょう」(友眞氏)
フリースケールはグローバルな視野から日本を見ている。今後の携帯電話産業の発展にどのような期待や考えを持っているのだろうか。
「今は日本の携帯電話メーカーが海外に進出する上で、いいタイミング、いい材料が揃っていると感じています。フリースケールの思いは、日本のメーカーにMXCのようなプラットフォームを活用していただき、海外で活躍してもらうことです。我々はそのためのサポートをさせていただきたい。
また、海外市場では商品性やマーケティング力が重要になります。携帯電話メーカーはすべて自社技術でモノ作りをしようとするのではなく、そういった部分は半導体メーカーに任せていただいて、その上での端末の差別化に専念されるといいと思います」(友眞氏)
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