すでに日本ではある程度フルブラウザの地位が確立され、端末内蔵のものから、アプリ形式のものまで、さまざまな種類が用意されている。韓国でもここ最近になって「フルブラウジング」という言葉を頻繁に聞くようになった。フルブラウジングは韓国に根付くのだろうか。韓国の実情を追ってみた。
2007年2月中旬、韓SK Telecom(以下、SKT)と韓KTFがフルブラウジングサービスを発表した。SKTは「Open Web」、KTFは「Mobile Web Surfing」と名付けている。
SKTのOpen Webは、専用プログラムをダウンロードしインストールすることで利用が可能だ。URLを直接入力でき、Webサイトの「テキスト表示」「イメージのみ表示」が可能だ。また携帯電話の画面が狭いことを考慮し、Webページを3段階に分けてズームできるようになっている。
現時点ではHSDPAに対応した4種類の端末に限り利用が可能で、料金制は「Data Save」「ting Data Free」「NATE Free」など、既存のデータ専用料金制に加入する必要がある。
一方のKTFが提供するMobile Web Surfingも、専用プログラムをダウンロードする方式だ。SKTと同様に、Webサイトアドレスの直接入力や「イメージのみ表示」「テキストのみ表示」ができるほか、画面の拡大・縮小表示も可能だ。
料金体系は500ウォン(約61円)/日の「日定額制」と、5000ウォン(約613円)/月の「月定額制」といった定額制が用意されたほか、「汎国民データ料金制」など既存の定額料金制でも利用可能となっている。
対応機種は、韓国の携帯電話の標準プラットフォームとなっている「WIPI」のバージョン2.1が搭載された端末に対応する。KTFによるとWIPI 2.1が搭載された端末は500万人以上のKTFユーザーが利用しているという(1月末現在のKTFユーザーは約1297万人)。
SKTは“3G以降のサービス利用の拡大”という目標が明確な一方、KTFではSKTの戦略を逆手に取り、より広いユーザー層に対応できるような作戦で対抗した。
SKTやKTFが提供するフルブラウジングは、PC向けWebサイトを一度キャリアのサーバで簡素化して携帯電話に転送する仕組みになっている。2社とも、PC上で見るWebページと同様になるよう努力しているが、韓国ならではの問題もある。
韓国企業や団体のWebサイトを見ると、あることに気付くだろう。それは動画やFlash、ActiveXなどを多用していることだ。Webページに動きと華やかさを与え、動的なサービスを提供できるなど便利ではあるが、全体的に「重たい」印象を受ける。また、それらを表示するためのプラグインをインストールするのも抵抗がある。
こうしたサイト構造が多いため、安全性を強化したWindows Vistaからアクセスすると、ActiveXを多用したWebページの利用に不具合が生じるといった問題も表面化している。
これは携帯フルブラウジングも同様で、プラグインに対応しない端末からアクセスしても表示されなかったり不具合が生じてしまう。ActiveXは、インターネットバンキングや公的証明書の発行など、政府から民間まで幅広いWebサイトで利用されており、今の韓国では避けて通れない問題なのだ。
さらにこれはPCや携帯電話だけの問題ではない。今後、テレビやポータブルマルチメディアプレーヤーなど、さまざまな機器がインターネットにつながるようになれば、また同じ問題が生じると懸念されている。
モバイル分野に関しては、キャリア3社やメーカー、韓国電子通信研究院、ソリューション業者など25機関が集結し、2006年6月に「韓国型モバイルOK 推進準備委員会」を発足させた。しかし、活動報告がいまだないところを見ると、これといった成果は上がっていないようだ。
フルブラウジングは、3Gとその後のサービスを活性化させるキラーコンテンツの1つであり、キャリアとしてはなんとしても成功させたい存在だ。また、各種問題を解決できれば、他の端末でも起こりうるフルブラウジング時の問題を解決するノウハウも蓄積できそうだ。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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