Review:考え得る機能をすべて詰め込んだハイウエストの「PBRW001」ハイウエスト・ブレインネットの「PBRW001」は,無線LANのアクセスポイント機能のほか,シリアル・パラレルポートまで備え,プリンタやアナログモデム/ISDN TAを共有することもできる多機能なブロードバンドルータだ。
ブロードバンドルータの高機能化につれ,最近は,ルータ以外の機能──たとえば,無線LANのアクセスポイントやプリントサーバの機能などを併せ持つ製品が増え始めている。新製品が続々登場して,製品間の差異が判りにくくなっているため,売る側も差別化に懸命のようだ。 もっとも,ブロードバンドルータも,無線アクセスポイントやプリントサーバも,組み込みCPUを搭載した超小型PCシステムである。これらを別々の製品とした場合,それぞれに1つずつCPUが必要だが,1つの製品に詰め込んでしまえば,CPUは1つだけで済むというメリットがある。ハードウェアとしては,インタフェース(アクセスポイントなら無線LAN,プリントサーバならパラレルポート)だけ用意し,あとは,機能を実現するためのソフトウェアさえ追加すれば,多機能ネットワーク機器の出来上がりだ。当然,単機能製品に比べ,コストパフォーマンスが優れることになる。ブロードバンドルータの多機能化の裏には,こういった事情もあるのだ。
今回,レビューする「PBRW001」も,無線LANのアクセスポイント機能を持ったブロードバンドルータである(8月6日の記事を参照)。シリアル・パラレルポートまで備えており,プリンタやアナログモデム/ISDN TAを共有することもできるという,現時点で考え得る機能はすべて詰め込んだ理想的な製品だ。ハイウエスト・ブレインネットの「PERSOL」シリーズには,ほかに,無線LANの機能がないモデル(4ポートハブ内蔵の「PBR001」や7ポートの「PBR002」)が存在し,利用する環境に応じた選択が可能となっている。 まず,概観から眺めよう。多機能な製品だけあって,コネクタ類は豊富だ。前面には,4ポートのスイッチハブとWANポート。裏面には,シリアルポートとパラレルポートが1ポートずつ並ぶ。両側面には,無線LANのためのアンテナが1本ずつ立っている。 ユーザーのPCとは,イーサネットか無線LAN経由で通信する。ブロードバンドモデム(ADSLモデム,ケーブルモデム,メディアコンバータなど)は,WANポートに接続することになる。障害時の予備回線を用意しておきたいなら,ISDN TAやアナログモデムをシリアルポートに接続することも可能だ。さらに,共有したいプリンタがあれば,パラレルポートに接続すればよい。 多機能がセールスポイントの製品だが,基本となるブロードバンドルータとしての機能もしっかりしている。設定は,お馴染みのウェブブラウザによるものだ(画面1)。
WAN側IPアドレスの取得方法に関しては,固定,DHCP,PPPoE,シリアルポート経由のダイヤルアップから選択可能となっている(画面2)。ブロードバンド回線の障害時に,シリアルポートにつなげたアナログモデム/ISDN TAでダイヤルアップしたいときは,あらかじめ,ダイヤルアップ先の予備ISPについて設定しておくとよいだろう。取得方法を別のものに切り替えても,設定内容は保存されるため,事前に設定さえしておけば,取得方法をダイヤルアップに変更するだけで,容易にシリアル経由の予備回線へ切り替えることができるからだ。 ただし,設定はそれぞれの取得方法ごとに1組だけしか保存できない。複数のPPPoE接続先を切り替えることができないのは残念だ。 また,シリアルポートの通信速度は230400bpsまで対応するため,128Kbps対応のISDN TAでも性能を発揮できるが,接続するモデム/TAの設定ファイルは,Windows用やMac用のものがそのまま使えるわけではない。うまく設定できない場合は,サポートに頼らざるを得ないだろう。
仮想サーバやDMZなど,ブロードバンドルータとして一般的な機能も,しっかりサポートしている(7月13日の記事を参照)。逆に,ほかのルータでは,あまり見かけない項目として「特殊AP(アプリケーション)」の設定がある(画面3)。名称だけではどのような機能なのかわかりづらいので,説明しておこう。 一般のアプリでは,LAN内のクライアントPCから接続要求が送信された後,サーバからの返答は,接続要求と同じポート番号に戻ってくる。このため,アドレス変換機能により,IPアドレスがすべて同じになっても,ルータは,ポート番号によって,どのクライアントPCと通信しているのか,識別することができる。 ところが,コミュニケーション系などの特殊なアプリでは,複数のセッションを使用するため,サーバからの返答が,接続要求と同じポート番号だけでなく,それ以外の複数のポートにも戻ってくる。接続要求と異なるポート番号に送られてくるパケットは,ルータでは,どのクライアントPCと通信している分なのかわからないため破棄され,通信が途絶えてしまうことになる。 このようなアプリに対して,一部のルータは,内部のNATソフトウェア上で個別に対応しているが,「PERSOL」シリーズは,汎用的な設定画面をもち,新しいアプリでも,ユーザーが自分で設定することにより対応できるよう工夫されている。アプリの種類をトリガーとし(送信先ポート番号で指定),それぞれに戻ってくるポート番号を設定する(不連続な範囲指定も可能)。メジャーなアプリに関しては,アプリの名称だけで設定できるようにもなっている。
そのほかの特徴的な機能としては,DHCP使用時のホスト名指定,PPPoE使用時の固定IP設定などがある。また,ログ機能も備え,ルータが接続を拒否したアクセスも残る(画面4)。
最後に,ルータ以外の機能にも触れておこう。 プリントサーバ機能は,Windows 95/98/Me/NT/2000に対応する。付属のソフトをインストールすると,「ポート」が追加されるので,プリンタのプロパティで出力先のポートを通常のLPT1から,新しく作成されたポートに変更するだけで利用可能だ。これは,TCP/IPを利用したプリントサーバでは,一般的な方法である。「PERSOL」シリーズが便利な点は,管理者以外でも,ウェブ画面で簡単にジョブ制御ができることだ。間違えて印刷しても,途中で取り消すことができる(画面5)。
また,無線LANのアクセスポイント機能では,128ビットのWEPによる暗号化や,MACアドレスによるアクセス制御が利用でき,セキュリティ面にも配慮している。他社製品との相互互換性に関しては,動作確認のとれた製品をホームページ上に公開するという。 このように豊富な機能を持つ製品であるが,それぞれの機能がおざなりになっていることはない。価格や設置スペースの面で,かなり有利な製品であるため,家庭内LANの構成を一新したいと考えているユーザーに最適だろう。
関連記事 関連リンク [吉川敦 ,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
最新スペック搭載ゲームパソコン
FEED BACK |