「100Mbpsの実証実験」は進む――CDSPとして業界参入を狙うTTNet

FTTHの時代に,多くの映像コンテンツを配信するためのプラットフォームは貴重。すぐそこに見える巨大な市場をにらみ,TTNetは実証実験を経てCDSPとしての参入を目指す。

【国内記事】 2001年11月30日更新

 東京通信ネットワーク(TTNet)技術部ブロードバンドグループマネージャーの大槻健一郎氏は,11月29日に都内で開催された「SGI Solution Fair」で講演を行い,同社が東京電力と進めているブロードバンドコンテンツ配信プラットフォーム実証実験の現状と,それを受けた同社の戦略について説明した。

 今回の実証実験は,両社が今年6月発表したもので(6月5日の記事参照),FTTHなど高速回線の利用状況に関するデータ収集に加え,インフラ構築からコンテンツ配信までを総合的に検証することが狙いだった。


東京通信ネットワーク技術部ブロードバンドグループマネージャー,大槻健一郎氏

 実験では,コンテンツホルダーからブロードバンド映像の提供を受け,TTNetのプラットフォーム上で都内2地域のモニターに発信した。東京電力グループの持つアクセスインフラを活用し,TTNet,スピードネット,テプコケーブルテレビや,FTTHのモニターから645名の参加者を集めた。

 6月からFTTHを使った仮試験を行い,7月よりオンデマンドの本試験が開始された。8月には野球・サッカーなどライブイベントのマルチキャスト配信を追加し,10月から放送型・双方向型の配信実験も行っている。11月に入ってからは「フェーズ2」に移行し,来年3月まで課金決済システムを含めた実験を行う。実験は当初,今年12月までを予定していたが,延長することが決まったという。

4.5Mbpsの高ビットレート映像を配信

 実際の映像配信にあたっては,まずコンテンツホルダーから業務用マスターテープやメタデータなどを受けとる。これにエンコードを行い,デジタル編集,著作権保護機能などを付加した上で,配信する。

 同社が配信するのは,あくまで高ビットレートの映像での,FTTHモニター向けに提供するのはMPEG-2 TS(トランスポートストリーム=通信や放送向けストリームの規格)による,640×480ピクセルの4.5Mbpsの映像。ほかにFTTHユーザー以外も対象にしたRealVideoによる,640×480ピクセルの2Mbpsの映像を提供する。RealVideoの動画はアクセスしたユーザーの回線に応じて異なる帯域を用意する「sure stream方式」となっており,1Mbps,512Kbps,256Kbpsなどに可変だ。

 大槻氏は「TVならフルスクリーンで視聴できる。CS放送に利用されている映像品質を目標にした」と述べており,高品質の映像を追求する姿勢が目立つ。「FTTHはすぐにやってくる」(同)と見ているからで,8MbpsADSLでも視聴が難しいような高帯域の画像も,積極的に配信したい考えだ。

 同氏によれば,目下の悩みは,RealPlayerの映像を作成する際に一括してハードウェアエンコードできないことだという。現時点ではいったんMPEG-1にハードエンコードした後,「RealProducer 8.5」でソフトエンコードするという,ややまわりくどい処理を行っている。このため,画像が“MPEG-1クラス”まで落ちてしまうのだという。「現在はほかに技術がないか模索中だ」(大槻氏)

マーケティング手法の蓄積も

 今回の実験では,モニターにIDとパスワードを発行して,マーケティングデータも収集している。こうしたデータを蓄積するのも,実証実験の狙いの1つだ。

 大槻氏は実証実験において,「こちらからアクションを起こさないと,モニターは視聴してくれない」ことが分かったという。同氏は実験期間中,映像サイトの内容についてアンケートを行った際に,アクセスが急増した事例を引用。アンケートがコンテンツを想起させたため,映像の視聴率が上がったのではないかと分析した。

 「マーケティング手法として,メールで情報をプッシュすることも考えている。ライブ映像などを中継する場合は,事前の告知が有効だろう」(大槻氏)

 今回の講演では,実際にTTNetがプラットフォーム事業を明確に事業化するかどうかは明言されなかった。しかし,来年3月に東京電力グループがFTTHサービスを開始することを考えると(10月3日の記事参照),同社が今後CDSP(コンテンツ・ディストリビューション・サービス・プロバイダ)として事業に参入する可能性はかなり高い。

 大槻氏は「現在,ブロードバンドで注目されているビジネスは,プラットフォームとアクセス系。TTNetはそのうち,特にプラットフォームに注目している」と語っている。すぐそこに迫るFTTH時代をにらみ,TTNetはCDSPとして,コンテンツ市場を狙う。

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[杉浦正武,ITmedia]

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