「PRONTO」がホットスポット事業に本格参入へ

サントリー系のバー＆喫茶店チェーン「PRONTO」がホットスポットビジネスに乗り出す。12月4日にオープンした秋葉原店を足がかりとしてビジネススキームを検討，チェーン全店規模で無線LANの導入を進める構えだ。

【国内記事】

2001年12月5日更新

　秋葉原に新しいホットスポットが誕生した。中央通りから1本奥に入った場所〜クレバリー2号店の隣〜に位置するカフェ「PRONTO」だ。大手喫茶店チェーンがこうしたホットスポットビジネスに乗り出すのが国内初なら，無線LANに加えて電源コンセントを利用できる点も新鮮。プロントコーポレーションの石原直樹社長によると，同社ではチェーン全店舗レベルの無線LAN導入を進めるため，秋葉原でビジネススキームの検証を行うという。

オープンソースの新しい拠点「Linux cafe」（別記事を参照）。この1階にPRONTが出店した

　店内には，「Bフレッツ」と予備のADSL回線を引き込み，東芝ブランドのIEEE 802.11b無線LANアクセスポイントを2基設置。また，各所に電源コンセントを配置して来客が自由に使えるようにしている。入り口に近い禁煙ゾーンにはコンパックのPocket PCが数台置かれ，PCを持たない客でも無線LANとインターネットを体験することができる。

壁面のほか，丸テーブルの上にも電源コンセントがある

　石原氏によると，もともとPRONTOでは「駅前など立地がよく，かつビジネスマン，ビジネスウーマンの客を確保できる場所」といった出店条件があるという。秋葉原の裏通りに位置するLinux cafeは，もちろん条件に合わない。

「（リナックスカフェ設立委員会から）話を受けたときは，Starbucksが米国で展開しているようなサービスの実験をしないか？　と言われた。社内のシステム開発部を通じてコンパックや東芝，IBMなどと協力関係を築けたこともあり，社内や株主を説得して実現にこぎつけた」（石原氏）。

プロントコーポレーションの石原直樹社長（Linux cafeの記者会見で撮影）

　秋葉原で3〜4カ月間の検証を行ったあと，「ビジネススキームという課題をクリアできると判断したら，全チェーン規模で無線LANの導入を進める」構えだ。ただし，PRONTOの場合，多くの店はフランチャイズであるため，まずオーナーを説得する必要がある。「オーナーの賛同を得て，かつ需要の高い場所から導入することになるだろう」（石原氏）。

付加価値サービスのスキーム

　ホットスポットを店の付加価値サービスと位置付けるPRONTO。同社がターゲットとするビジネス街では，集客につながる大きな武器となるだろう。しかし一方で，ホットスポット化で長居をする客が増えれば，当然収入は減る。飲食店にとって，客回転率はそのまま経営に結びつく重要な指標だ。とくにPRONTOのような組織では，回転率の低下は店舗の存続そのものを危うくする。どのようにしてこのジレンマを解消するのだろうか？

　石原氏が検討しているのは，時間による課金だ。「当初の15分程度は無料で使える。喫茶店で最初に出てくる水のようなものだ。その後は，時間によって従量課金する方向が現実的。受益者負担という意味合いからも適切だと考えている」

　また，店が込み合う昼食時などは無線LANそのものを切り，使えないようにするという。平日なら10〜12時，14〜16時といった，比較的空いた時間に利用してもらう考えだ。このほか，企業との個別契約をベースにプライベートネットワークを構築し，「PRONTOをサテライトオフィスとして使えるようなビジネスモデルも検討中」という。

店内の注意書き。今のところは「おひとり様30分程度」「混雑時の利用はご遠慮ください」と書かれている

　Starbucksにインフラを提供する米MobileStarのように，ホットスポット事業で話題は集めたものの，投資を回収できずに喘いでいる企業も多い（10月18日の記事を参照）。そんな中で，ビジネスマンのニーズに主眼を置き，課金によってサービスを支えようとするPRONTOの手法は手堅い。具体的な料金レベルは「全く未定」だが，PRONTOはホットスポット拡大に向けた1つの条件を示している。

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