無線LANの“自由とリスク”

IEEE802.11b規格の無線LANが普及しつつある。電波を発する立派な無線局にもかかわらず免許不要というこのシステムは,それなりのリスクが伴う。無線LANよって得られる“自由”と,代償としての“リスク”について,ネットワンシステムズがセミナーを行った。

【国内記事】 2001年12月6日更新

 企業・個人ユーザーのネットワーク化やブロードバンドの普及,ノートPCの需要増などに伴って,IEEE802.11b規格の無線LAN製品が広く普及しつつある。読者の中にも「そろそろ無線LANを導入してみようかな」と考えている人も多いのではないだろうか。

 パシフィコ横浜で12月3〜7日の期間で開催されているインターネット関連のイベント「InternetWeek 2001」で,ネットワンシステムズ技術本部の松戸孝氏が「無線LAN製品の性格とその限界〜導入前に本当に理解・納得したい大原則〜」と題したセミナーを行った。

 セミナーの中で松戸氏は,ネットワーク設備のシステムインテグレータとして多くの企業のネットワーク構築を行ってきた同社ならではの視点を盛り込みながら,無線LANのメリットとデメリットを紹介。「無線LANは,免許不要ゆえの自由とリスクがある」と語り,無線LANが安易に普及していることについて警鐘を鳴らした。

 無線LANについては理解している読者も多いだろうが,簡単に言ってしまうとネットワークのハブがアクセスポイントとなり,ハブからのケーブルが無線(電波)に,10BASE-T/100BASE-TXのLANカードが無線LANカードに置き換わっただけで,基本的には有線LANシステムと何ら変わりない。


無線LANは,ケーブルが無線に置き換わっただけ

 無線部の入出力は,2.4GHz帯の電波(直接拡散スペクトラム拡散方式)でデータを伝送する。つまり,無線LAN製品は電波を送受信する立派な無線局というわけだ。「無線局であるからには,電波法に従わなければならない。目に見えない電波の扱いには最新の注意が必要だ。TVやラジオといった放送局やアマチュア無線のように,本来,無線を扱うためには無線局従事者という国家資格の免許を取得しなければいけない」(松戸氏)。

 一方,通信機器メーカーが技術基準適合証明を受けた無線LAN製品は,免許不要でユーザーが自由に使うことができる。「免許が必要な放送局やアマチュア無線は“自動車”で,無線LANは“自転車”のようなものだ」(松戸氏)。

 しかし,誰もが気軽に乗れる自転車には,基本的に1人乗車でスピードや荷物の積載量にも限界があるなど制限も多い。同様に無線LANも,その手軽さゆえに多くのリスクが付きまとう。

 まず,利用できる周波数に制限がある。無線LANは,ISM帯(Industrial Scientific Medical band:産業科学医療バンド)という2.4〜2.497GHz帯の周波数を利用するのだが,ここにはアマチュア無線や移動衛星,VICS,工場などで仕分けに使う移動体識別システムなど,多くのシステムが周波数を共用している帯域だ。

 松戸氏は「周波数を共用しているということは,お互いの電波が干渉し合うというリスクが生じる。そのほか,電子レンジやBluetoothといった電波も,ノイズとなって通信を不安定にする」と2.4GHz帯の短所を指摘する。


2.4GHz帯は多くのシステムが共用しており,電波干渉やノイズが生じるといった短所がある

 また,2.4GHzという高帯域の電波は直進性が強く,障害物に弱いという欠点がある。電波の波長も12センチほどなので,室内のほとんどの物体は障害物となってしまう。「直進性が強い電波を使う無線LANは“見通し”がとても重要。什器の影になったりすると,回折率が弱いために電波が極端に弱くなる。書類が無線LANカードを覆ったり,人が横切っただけでもスループットが落ちる」(松戸氏)。


直進性が強い電波を使う無線LANは“見通し”が重要

 さらに10ミリワット/MHz以下という小さな送信電力しか許されていない無線LANは,見通しがある環境でも50メートル程度の通信距離となる。

 見通しが悪くても,反射した電波で通信ができることもある。しかし,高速デジタル伝送を行う無線LAN通信は,障害物による反射波が苦手なのだ。「直接波に比べて遅れてくる反射波は受信波形を歪ませて,高速伝送を妨害する」(松戸氏)。

 ケーブルという制約を無線化によって取り払い,電波を扱う無線局ながら免許不要と,一見とても便利に見える無線LAN。しかし現実は,免許不要の手軽な規格ゆえに通信品質の保証がなかったり,利用方法にさまざまな制限があるなどリスクも大きい。

 「有線ケーブルによるネットワーク化がどうしても無理で,どうしても無線LANシステムを導入したいというユーザーには,無線による加入者系データ通信サービス方式FWA(Fixed Wireless Access)を勧めている」(松戸氏)。

 最後に松戸氏は「無線LANを導入するときは,そのリスクをそれこそ何度も何度も自問自答して確認した上で決めて欲しい」と締めくくった。

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▼ ネットワンシステムズ

[西坂真人,ITmedia]

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