ウワサの“IPv6自動車”に乗ってきましたインターネットITS共同研究グループが,川崎地区で実証実験を開始した。IPv6とインターネット接続が自動車にもたらすものは?
インターネットITS共同研究グループが,川崎地区で実証実験を開始した。IPv6ネットワークを使い,ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)をインターネットに接続する試みだ。インターネット対応のカーナビは既に市場にあるが,IPv6になるとちょっと違うらしい。 インターネットITS共同研究グループは,経済産業省の支援のもと,インターネットによるITSの共通基盤を構築するために開発と実験を行う産官学共同プロジェクト。慶応大学の村井純教授が率いる同大学SFC研究所にくわえ,トヨタ自動車,デンソー,NECの3社が名を連ねている。 今回の実証実験は,一般のドライバーからモニターを募り,70台の車両にMobile IPv6対応のLinuxシステムを搭載して行われている。スタンドでのサービスガイダンス,車内へのコンテンツ配信,電子マネーを使った駐車場での自動決済といった内容だ。
プッシュ配信は,川崎地区をメッシュ状に区切り,モニター車が別のエリアに入ったときにコンテンツが送られる仕組み。リクルートのタウン情報誌「Hot Pepper」が協力しており,ショップ情報やグルメ情報が配信されている。
ガソリンスタンドは,新川崎駅前の日石三菱「Dr.Drive」が協力した。ここでは主に,DSRC(Dedivate Short Range Communication)を使ったカーケア情報の配信が行われている。
DSRCは,有料道路の自動料金収受システム(ETC)で利用されている狭域無線通信技術だ。5.8GHz帯を使い,1Mbps程度の帯域を持つという。既存の交通システムと連動するために欠かせないが,今のところ帯域幅が狭い点がネックだ。 「DSRCは,自動車の金属車体に反射する特性があるが,実験レベルでは4Mbps程度まで高速化できた。これにIPをのせた(IP over DSRC)のは,今回の実験が初めて」(NEC)。
また,“狭域”とはいえ,DSRCには最大30メートルほどの伝送距離がある。このため,ガソリンスタンドの入り口などに設置すれば,車が入ってきた瞬間に情報をプッシュできるという。 その応用例がこれだ。無線エリア内にクライアントが入ったことを感知すると,即座に顧客データを呼び出し,「お客様のお車の車検満了日があと3カ月に近付いております」などと教えてくれる。
また,雨が降った後なら「昨日は雨でしたね。ドライブスルーの洗車でリフレッシュはいかがですか?」と言われてしまう。なかなかの商売上手だが,要らぬお世話という気がしないでもない。ただ,店員さんに勧められるよりは,断りやすいかも。
IPv6ネットワーク搭載の高機能自動車今回の実験には,もう1つの目玉があった。インターネットITSの5〜10年後の姿を具現化したコンセプトカー「高機能実験車」だ。ネーミングはともかく,内容はスゴイらしい。
外観はごく一般的なワゴン車だが,中身はバリバリのIPv6チューンだ。車内にIPv6ネットワークを構築し,各座席に専用のタッチパネルディスプレイや各種センサーを装備。外の世界とシームレスにつながる「ウェアラブルコンピュータとしての自動車」(村井氏)だ。 各種のセンサーが使うIPアドレスは,合わせて20個以上。「自動車のセンサーがインターネットに繋がることは,名古屋の実証実験で示したように,集計情報としてバリューを生む。道路の情報が,道路の設計や事故防止に役立つだろう」(村井氏)。 先に実験が開始された名古屋地区では,タクシーのワイパーにセンサーを付け,走行中の自動車から情報を収集して“生”の気象情報を得ることができるという。
アプリケーションは主に5つ高機能実験車の主なアプリケーションは5つある。まず,安全運転支援機能。これは,自動車に取り付けたGセンサー(加速度センサー)などで運転の状態をモニターし,インターネットを介してデータセンターに蓄積するシステムだ。ブレーキの強さ,停止タイミングなど,各項目を解析してグラフ化してくれる。もちろん,この車で四輪ドリフトなんかしたら,即座に減点されてしまう。将来的には,インターネットを通じてパトカーが駆けつけるようになるのかも……。
2つめが運転者や同乗者の健康管理機能。脈拍センサーや温度センサーなどで健康状態をモニターし,やはり視覚化してくれる。
各座席のCCDやディスプレイを活かした機能が,グループコミュニケーション機能。狭い車内でTV電話というのも間抜けな話だが,このシステムはインターネット&マルチキャストに対応している。つまり,他の車とも同時に会話できるのだ。
このほか,屋根の上に設置された全方位カメラを使った道路情報の提供,Webブラウザなどを操作する音声ポータル機能,個人認証カードシステムなど,盛りだくさんの贅沢な仕様だ。
また。移動することが前提の自動車だけに,どこでも通信を可能にするため,IEEE 802.11b,PHS,Do-Pa,DSRCといった複数の無線システムを搭載している。今のところ,移動中はDo-Pa,ガソリンスタンドに入るとDSRC,といった具合。Do-Paはいずれ,3Gに変更される予定だ。
今後,インターネットに繋がることは,自動車の情報化に欠かせない要素になる。ドライバーに素早く情報を与え,また「繋がっている」こと事態が安心感をもたらすだろう。 ただ,今回の実験では,逆に「管理されている」印象を受けたのも事実だ。常に情報がセンターに蓄積され,走っている場所はおろか,操作まで評価される。ITSの高度化は,ドライバーをちょっと窮屈にするのかもしれない。
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