“回線握り”行政指導で生じた無意味な言い合い

ADSLの解除を申し込んでも相手の対応が遅く,いつまでも次のサービスに移行できない。いわゆる“回線握り”に対して行政の指導が入ったが……。

【国内記事】 2002年2月9日更新

 ADSLの解除を申し込んでも相手の対応が遅く,いつまでも次のサービスに移行できない。いわゆる“回線握り”に対して行政の指導が入った。総務省は8日,「Yahoo! BB」に回線を提供するビー・ビー・テクノロジー(BBT)とNTT東西地域会社にそれぞれ指導文書を発出し,対応の改善を求めた。内容は既報の通りだが,公開された数字から,ちょっとした論争が起きている。

 ADSLサービスを切り替えたくても「あなたの回線は他事業者に接続されている」として保留される。それまで使っていたサービスを解約した後までその状態が続くと,インターネット接続の手段がアナログモデムのみになってしまう。これが“回線握り”の弊害だ。

 総務省が12月1日から25日までに電気通信消費者相談センターに寄せられた苦情の内容を調査したところ,利用者がBBTに解約を申し込んでから実際に回線が開放されるまでの期間は,平均で38日を要していたという。

 サービス解約までにかかる期間は,「利用者の解約申し出から,BBTがNTT東西に設備撤去を申し込むまでの期間」と「BBTの依頼を受けたNTT東西が実際に工事を行い,完了を報告するまでの期間」を合わせたものだが,総務省の調査報告では,内訳はBBTが平均27日,NTT東西は11日だった。

 しかし,BBT側の見解は多少異なるようだ。

 同社が公表した文書によると,BBT側の平均滞留日数は平均9.4日。対してNTT側の滞留日数は,なんと27.7日と立場が逆転している。これは,「過去6カ月間の全データ(1万7363件)を分析した結果,全体的な数値で見た場合」という。つまり,契約解除のピークだった9月から2月までを平均化した数字だ。

 また,直近の2月を例に挙げ,「BBTの処理は平均1日であり,NTT側の処理は4日。これにより,NTT側の処理の方が,キャンセル処理に関する日数を要していることが判明している」(同社)という。

解除申込年月BBT滞留平均日数NTT滞留平均日数
2001年9月13.8日66.6日
2001年10月13.9日32.5日
2001年11月12.4日14.5日
2001年12月8.5日13.3日
2002年1月6.6日7.7日
2002年2月1.0日4.0日
平均9.4日27.7日
BBTの公表した解除申込推移表(全国)

 これに対してNTT東日本は,「12月時点の処理日数は平均8.6日と報告されている。BBTの数字は何をもって根拠としているのか分からない」(広報)と反論する。同社の数字は,総務省の調査と同じ,12月1日〜25日に限定したもの。注目は,BBTが「いまだ手続き上整備されていない部分がある」と指摘するNTT西日本だが,同社は「現在調査中」(広報)として数字は出していない。

 もっとも,待たされたユーザーにしてみれば,多少の数字の違いなど,苦笑いの種にしかならないだろう。実際,改めてBBTの資料を眺めると,その数字に驚かされる。2001年9月に解除を申し込んだユーザーの平均滞留日数は,BBTとNTT東西を合わせて80日超。つまり,秋に解除を申し込んだ人たちの多くが,年末まで回線を“握られていた”わけだ。どちらが長く握っていたかはともかく,ともに対応が遅かったのは変わらない。

状況は改善の方向へ

 救いは,「遅かった」と過去形で語ることができる状況になりつつあることだ。BBTによると,昨年12月3日にコールセンターの増員を行い,また1月10日には自動キャンセル処理システムを稼働させたという。「社内体制を整備することで状況は概ね改善された。キャンセル処理(BBT側の処理)にかかる日数は,一部の例外を除いて原則1日になっている」(BBT)。

 NTT東日本も「標準的な工事期間を7日として対応を進めている」と話す。同社は,ADSL事業者がかねてから求めていた顧客データベースへの接続を実現する方向で検討中だ。総務省の指導内容にある「回線名義人確認の簡素化等」(総務省の指導内容)もあわせ,解約のみならず,新規のサービス申込み時にも期間短縮が期待される。

 今回の行政指導は,NTT東西に対してはBBTが12月末に提出した意見申し出を受ける形で,またBBTについてはエンドユーザーから寄せられた苦情をくみ取った形で発出された。出所が異なる,また既にピークの過ぎた問題について,総務省がタイミングを合わせて指導を行ったのは,両社の「痛み分け」あるいは「両成敗」を狙ったのか。あるいは,対抗意識を糧として,両社が改善のスピードを上げることを期待しているのだろうか。

 とりあえず,対抗意識だけは十分過ぎるほどありそうな両社だから,期待してみよう。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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