Streaming Now!〜流れをつかめ!
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【国内記事】 | 2002年2月22日更新 |
2月中旬にビバリーヒルズで開催された「QuickTime Live !」というイベントで,米AppleはMPEG-4をサポートした「QuickTime 6」を発表した。ここでは,その意義というものを,もう一度考えてみたい。
QuickTime 6でサポートされるのは,数あるMPEG-4のプロファイルのうち,「動画+音声」のシンプルなファイルについてだけのようだ。つまり,iVASTやEnvivioが行っているシステムレイヤーのサポートまでは行われない。「オブジェクトベースでインタラクティブ」ではないのである。 この点には若干ガッカリさせられたが,Appleにとって,そしてISMA(Internet Streaming Media Alliance)に加入する多くの企業にとって,まず大切なのは「動画+音声」の互換性を考慮し,幅広く普及させることなのだ。
実は,かなりハッキリした規格と考えられているMPEG-2に関しても,互換性の問題を指摘されることが,たびたびある。さまざまなプロファイルがあり,プレイヤーなどによって,再生できるレベルに差があったりするのだ。だから,MPEG-4に関しては,そういうことがないよう,プロファイルを絞り込みましょう,というのがISMAの動きなのである。
これは理解できる。インタラクティブにしたければ,QuickTimeの仕組みの中で扱いましょう,ということなのである。
が,私のように「MPEG-4のメリットはオブジェクトベースのインタラクティブな云々」と言ってきた人達にとっては,なんとも残念なことになってしまっている。
では,QuickTimeがMPEG-4をサポートすると何が良くなるのか?
Appleのデモを見た人には,「圧縮効率の良さ,クオリティの高さがポイント」とでもとられそうだが,それはあくまでも一部。むしろ,コーデックの質を追求するのであれば,よりきれいで,より効率のよいコーデックは,間違いなく,将来出てくる。
では,「MPEG-4互換のプレイヤーであれば,どのプレイヤーでも再生できる」がポイントなのか。確かにこれも正解なのだが,現状のパソコン上での使用に限定して考えれば,これも大きなメリットではない。プレイヤーがガンガン登場すれば別だが,おそらくそうはならないであろうから……。
私から見ると大きなメリットは2つ。「パソコンだけでなく,さまざまなデバイスで再生できるフォーマットである」ことと,「MPEG-4互換サーバであれば,どれを使って配信してもよい」ことである。
これまでQuickTimeによるストリーミングはパソコンでしか受信できなかった。が,MPEG-4は業界スタンダードとしてライセンスされるものである。すでにiVASTがやっているように,チップにプレイヤーを埋め込むようなタイプも続々と登場するハズ。
そうなってくれば,セットトップボックス,携帯端末,DVDと,あらゆる機器にMPEG-4ベースのプレイヤーが搭載される可能性が出てくる。1つのデータをあらゆるデバイスに変換なしで配信するという,まさに「ワンソース・マルチユース」の世界に突入できるのだ。
こうして活用範囲が広がれば,ストリーミングは「あのパソコンで見るキタナい映像」から,「あの携帯電話で見られるヤツ」「あのウチのテレビにつないであるヤツ。いつもお父さんがエッチなの見てる」といった方向に広がっていく可能性があるのだ。
実際,Appleは今回のQuickTime Live !の中で,「QuickTimeを使って生成したMPEG-4データをサンのサーバにアップロードし,そこから送られるストリーミングをセットトップボックスで再生する」というデモを行っていた。NTTドコモのFOMA機で「i-Motion」によるMPEG-4再生を行うというデモも見せてくれた。
というように,MPEG-4という統一規格は,ストリーミングという素晴らしい技術が,パソコンという呪縛から逃れるために必要なものなのである。
同時に,「インターネット」という呪縛から逃れるためにも重要な技術である。例えば,デジタル衛星放送のデータとしてMPEG-4のストリームを送り込むことも可能なのだ。
そこまで行き着けば,ストリーミングは初めて世の中を変える力を持ってくると,私は思っている。そして,MPEG-4は,そこまで見通した上で登場した,はじめての標準規格なのである。
が,AppleはQuickTime 6をリリースできない。ライセンスの問題があるからである。御存じない方のために説明すると,AppleはすでにMPEG-4をインプリメントしたQuickTime 6をすでに開発しているのだが,ライセンスの問題によってリリースできないという事態に陥っている。
MPEG LAが定めたライセンスによると,まず,MPEG-4のデコーダとエンコーダに対して年間100万ドルのライセンス料が課せられる。これはAppleが支払うべきもので,ここまでは何の問題もない。
問題は,配付する側に対しても,「1ストリーム1時間いくら」という料金が課せられてしまうということだ。例えば,「Final Cut Pro」で編集したビデオをMPEG-4ファイルに書き出しても,それを自由に配付できないことになる。膨大なインターネットの中,いったい誰が監視の目を光らせるつもりなのか知らないが,いずれにしても,勝手に配付できないものにしようとしているのである。
せっかく世の中がオープンになり,個人ベースで情報を発信できる時代になろうとしているのに,MPEG LAというところは,大規模な放送のことしか考えていないのであろうか? ヤレヤレ,これじゃ,いつまで経ってもストリーミングは「パソコンの技術」のままだ……。
この問題がクリアされない限り,MPEG-4の普及はあり得ないだろう。
P.S. MPEG-4に関する発表があったものの,QuickTime Live !に集まった人達は,それほど気にしていないようにも見えた。なぜなら,彼等の多くはコンテンツクリエイターであるから……。
彼等は,QuickTimeというものを,単なる配信技術だとは思っていない。むしろ,編集で使われる技術として楽しんでいるのだ。だから,何のフォーマットで配信するにせよ,ストリーミング型にするにせよ,オンデマンド型にするにせよ,QuickTimeを使ってデータを作り上げるというスタンスだけは変えない。編集のためのベストなフォーマットがQuickTimeだということを知っているのである。
「MPEG-4がサポートされれば,QuickTimeで出来上がったものを,最後にMPEG-4に変換すればいい」
QuickTime野郎から見ると,それだけの話なのである。
[姉歯康,ITmedia]
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