ニュース 2002年5月10日 03:24 AM 更新

イー・アクセスの新ファームウェアを試してみました

イー・アクセスは、5月8日にADSL品質を向上させるという新ファームウェアを公開した。「品質向上バージョン」をうたうファームウェアの実力は?

 イー・アクセスが先日リリースした新ファームウェアは、ADSL回線の安定性と最大通信速度をアップさせるという。場合によっては“かなりの速度向上”が可能とウワサされる新ファームウェアを、早速導入してみた。

 アップデートの対象となるADSLモデムは、住友電気工業製の「TE4121C」、NECアクセステクニカの「AtermDR30F/CE」、そしてクリエイティブメディアの「BRITEPORT 8100C」の3機種。TE4121Cの場合は、NATを使いながら特定のPCにグローバルIPアドレスを付与する「GapNAT」機能も追加している。

AMラジオの干渉を抑える

 「品質向上」の仕組みは、通信時にBitMapを選択するアルゴリズムに変更を加え、AMラジオや反射といったノイズの干渉を避けるというもの。

 8M ADSLが利用する周波数帯の中には、4つのAMラジオ局が存在する(首都圏)。いずれも1.5Mbpsサービスの時には使っていなかった、比較的高い周波数の部分だ。

 距離によって高い周波数の部分から減衰していくADSL信号にとって、AMラジオの干渉は泣きっ面に蜂。とくに、NTT局から2〜3キロの距離がある場合は、この高い周波数の部分を活かせるかどうかでスピードが大きく左右される。アルゴリズムの変更で、その干渉をうまく避けよう、というのが新ファームウェアのコンセプトだ。

 イー・アクセスCTOの小畑至弘氏が自宅で試したところ、それまで900Kbpsだったリンクスピードが3Mbps超にアップしたというから、期待は高まる。「NTT局から2〜3キロのユーザーは、特に通信速度の向上が期待できるだろう」(同氏)。

 ただし、この数字をそのまま鵜呑みにすることはできない。「電話線が持つ能力を限界まで引き出してみた」と胸をはる小畑氏は、どうやら、CTOという職権を乱用(?)して、一般ユーザーの手が届かない部分まで「調整」したらしい……。

線路長2.65キロで試す

 今回のテスト環境は、イー・アクセス&ニフティの組み合わせだ。最寄の世田谷局から道なりで約2.2キロだが、NTT東西の提供する「電話回線の線路情報」によると、線路長2.65キロ、伝送損失は34dBとなっている。今回の新ファームウェアによって、速度向上が期待できる線路長である。

 事前に行った計測サイトによるテストの結果は、8Mサービスにも関わらず、一様に下り1.5〜1.58Mbpsだった。とくに不便さは感じていないものの、「イー・アクセスの8Mとしては少し遅いです」などというコメントを見ると、ちょっと悲しくなる。月額3300円とはいえ、ZDNetを更新するためのミッションクリティカルな回線である。


アップデート前のリンク速度は下り1792Kbps。上り736Kbps


RBB TODAYで実効速度を計測すると、下り1.58Mbps、上り614Kbps

 より良い仕事環境を求め、早速イー・アクセスのWebサイトから新ファームウェアをダウンロードする。「TE4121C」用の新バージョンは「Ver.1.11」だ。

 圧縮されているファイルを解凍したら、WebブラウザでTE4121Cの管理画面を呼び出す。保守メニューの「バージョンアップ」から、ファイル名を指定して転送ボタンをクリック。後は、フラッシュへの書き込み中を示すLEDランプの点滅が終わるまで待てばよい。転送は数秒で終わるが、その間、ルータモデムやPCの電源を切ったりしてはいけない。

 なお、バージョンアップを行う際は、これまでの設定をバックアップしておくことをお勧めする。TE4121Cの場合、「設定のバックアップ」メニューで設定をテキスト出力できるので、それをコピーしてエディタなどで保存しておけばいい。


アップデート終了


Software Versionは、「01.11」になった

とりあえず速度アップ

 モデム再起動後、早速「回線状況」を見てみると、微妙にリンクアップ速度が向上していた。結果は、上り下りとも30Kbpsほどのプラスだ。スピード計測サイトの結果も同様で、やはり20〜30Kbps上乗せされている。


アップデート後のリンク速度は下り1824Kbps。上り768Kbps


RBB Todayのスピード計測では、下り1.6Mbps、上り641Kbpsになった

 もちろん、これは体感できるほどのスピードアップではないのだが、初めて実効1.6Mbpsを超えたのが妙に嬉しい。1.5Mbps台では、8Mサービスである必要がないように思えてしまうが、1.6Mbps出ればなんとなく納得できるから不思議だ。わずかな違いとはいえ、わが家のADSLは、メニュー変更の危機を乗り切ることができた。

 イー・アクセスユーザーの集まる掲示板をみていると、数十〜数百Kbps向上したというケースがいくつか報告されていた。さすがにMbps単位の人は見かけないが、やはり速度向上が顕著なのは線路長2〜3キロあたりのようだ。

GapNATでIP電話?

 新ファームウェアのもう1つの目玉が「GapNAT」。GapNATは、LAN側にDMZを作り出し、1台のPCにグローバルIPアドレスを割り当てる機能だ。

 GapNATでは、グローバルIPアドレス宛の通信のうち、LAN側に通過させるものをプロトコルおよびTCP/UDPポート番号を指定して制限することができる。

 ルータの管理画面に「User」でログインすれば、GapNATの「簡単設定」画面が出てくる。IP電話サービスやネットワークゲームの利用が簡単になるのが有難い。


管理者用画面では、プルダウンメニューにGapNATモードが追加された。「マルチGapNAT」は、複数の固定アドレスが付与される法人メニュー向け

 イー・アクセスでは、総務省がIP電話向けに着信電話番号を付与することを見越して、Phone to PhoneのIP電話サービスを計画している。今回のGapNAT採用は、その環境を整える意味も併せ持っているようだ。

 なお、GapNATモードでグローバルIPアドレスを割り振る端末は、MACアドレスで指定できる。これを設定しておかないと、最初に接続したPCが自動的に割り当ててしまう。家族でADSL回線を共有している場合などは、グローバルIPアドレスの取り合いにならないよう、こっそり設定しておくことをお勧めする。

関連リンク
▼ ニュースリリース
▼ ダウンロードページ

[芹澤隆徳, ITmedia]

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