固定→携帯電話「接続論争」、平成電電の言い分平成電電は、先日の接続協定裁定申し立てについて、申請に至るまでの詳細な経緯と、その考えを説明した
平成電電は7月30日の事業説明会で、各携帯キャリアとの接続に関して接続協定裁定を申請した件を改めて説明した。同社の佐藤賢治社長は「前回の報道発表文では、総務省の指導などもあり、思うような記述ができなかった」として、申し立てに至る経緯などを話した。 同社は18日、総務省に提出した申請書の中で、携帯キャリアが事実上、利用者通信料金を設定する立場にある現状に疑問を投げかけている(記事参照)。
ことの起こりは、平成電電がマイラインで獲得したユーザー(現在は累計で13万人)を対象に、固定電話から携帯電話に“3分60円”でかけられる新サービスを開始しようとしたこと。ユーザーは相手の携帯電話番号を入力する前に、平成電電の事業者識別番号である「0083」を付けることで、割安な通話が行える――というサービスを想定していた。 接続形態としては、NTT地域会社の固定網を利用し、平成電電のネットワークを中継して、各携帯キャリアと接続するかたち(平成電電直収の回線利用時を除く)。事業開始に先立って、NTTドコモ、KDDI、J-フォン、ツーカーの4社と接続契約を締結しようとした。しかし、結果として「相互接続を拒絶された」(同)という。 実際のところは、2001年5月から1年以上も継続して協議してきたにも関わらず、なかなか話が進展しなかったようだ。「『システムの大幅な変更が必要で、技術的に難しい』とか、『業界の慣行を変えることになるので、全事業者と合意の上でないと難しい』とか理由をつけては、交渉を引き延ばされた」(平成電電)。 業を煮やした平成電電側は、今年6月12日に、4社に対して再度書類を送付する。これに対し、KDDI、J-フォン、ツーカーのいずれからも、依然として色よい返事はなかった。NTTドコモからは、「まだ返事すらこない」(同)状況だという。ここに至って、平成電電側は、電気通信事業法第39条第3項の規定に従い、相互接続締結を目指して裁定を申請することになる。
平成電電側は、接続には“技術的な問題がある”という携帯キャリア側の回答を、疑っている様子。真の理由は、「3分60円」という価格設定にあるとの見方だ。 今回、平成電電が開始しようとする3分60円の通話サービスは、下表を見ると分かるように、各携帯キャリアが設定している「固定→携帯接続時」の通話料金より割安となる。
平成電電はどうして、携帯キャリアより割安な料金を設定できたのだろうか。というのも、このサービスで同社は、NTT地域会社と携帯キャリアの双方に“網使用料”としての接続料を支払う必要があるからだ。たとえば、「固定電話からNTTドコモへかける」サービスを提供しようとした場合、同社が両社に払う3分あたりの接続料は、下表のようになる。
この条件下で3分60円のサービスを提供すると、場合によっては3分で数円の利益しか発生しない。一見するとビジネスとして成立しないようにも思える。 だが、ここにはからくりがあって、NTTドコモおよびNTT地域会社へ支払う接続料金は、ユーザーが通話する時間によって秒単位で変化する。一方、平成電電の料金体系では、たとえユーザーが10秒しか通話しなくとも、3分ぶん、60円の収入を得る。実際には「携帯電話での通話は、十数秒で収まるケースが多い」(平成電電の佐藤賢治社長)から、ユーザーから徴収する料金とドコモなどへ支払う接続料の差額は、先の試算より現実にはもっとあると考えられる。そこで同社は、3分60円でもビジネスとして十分成立するという予測を立てたわけだ。
平成電電によれば従来、こうした料金体系は「事実上、料金設定権が携帯キャリアにあり」、「画一的、専制的に利用者料金を設定してきた」。これは慣行化されており、そのため通話料は高止まりして、ユーザーは不利益を被っているという。 しかし今回、平成電電は、その慣行に逆らって3分60円の料金体系を打ち出そうとした。いわば業界に競争を持ち込もうとしているわけで、これに携帯キャリアが難色を示している――というのが平成電電の見方だ。 今回の裁定で平成電電が求めるのは、“固定通信事業者の料金設定権を伴う、ネットワークの相互接続”。通信自由化の潮流の中で、事業者間の競争及び関係企業の努力によって、料金を改善すべきとした。 関連記事 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 関連リンク ![]() [杉浦正武, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ![]() モバイルショップ
FEED BACK |