リビング+:連載 2003/01/22 17:12:00 更新

ネットワークな生活は何処からやってくる?(1)
「未来の暮らし」を実現するネットワーク家電?

よくいわれるように、こんなはずじゃなかった「21世紀」。ほかの時代に比べ、われわれがある面では非常に恵まれた生活環境にあるのは事実だ。でも、なにか物足りない。何が欠けているのだろう? 何を求めているのだろう?

 21世紀の始まりという大きな区切りは、ずいぶん前に過ぎてしまった。21世紀に生きる人間は「22世紀の社会って」などと夢想するどころか、ある種の不透明な「漠然とした不安」しかイメージしないが、20世紀における「21世紀」は確実に「夢」の姿をしていた。無公害カーが空中を飛び交い、人々は超小型情報機器を身につけている。家庭では全自動調理マシンが好きな食べ物を提供してくれ、壁一面にテレビ映像が映しだされる。新聞や雑誌は電子ペーパーで……。

 いま思えば、それはまったくもって陳腐な姿かもしれない。しかし、そこには多くの人が共通に抱く、大きな「希望」が託されていた。現実から目をそむけ、先に期待するしかなかったと穿った見方もできるが、とにかく「希望」を持っていた。

 もちろん、ある程度に解釈をすれば、夢の21世紀はすでに実現されている。携帯電話は音声通信の手段だけではなく、映像コミュニケーションの道具にもなりつつあるし、情報端末の面も持っている。しかし、個人的な意見だが、電話は電話にしか思えない。自宅にホームシアターシステムを組んで、壁サイズの映像を眺めていても、それはオーディオシステムの延長としか感じないし、電子レンジは技術的には素晴らしい機器だが、単なる「チンする」箱である。自動車はあいかわらず排気ガスを出しながら、地面を這いずり回っている。エコロジーへの配慮も喧伝されているが、現実に目を向ければ、自動車メーカーの配慮もユーザーの意識もまだまだ向上が必要なようだ。

 ネットワーク家電、IT家電というものが話題に上るようになって、すでにひさしい。5〜6年前ほどに複数の家電メーカーがいわゆるインターネット対応TV(アナログモデム内蔵でWebブラウザが可能な製品)を発売したときに、取材をした記憶があるが、はっきりいってリリースする側も時期尚早と感じており、先行投資的な意味合いだった。いま語られているのは、そういうインターネット対応製品(だけ)ではなく、家電どうしを接続し、家庭内あるいは外部の情報を共有させて、さまざまな機能に利用しようというものだ。PC製品の一分野となりつつあるホームサーバ系PCと重なる部分ももちろんある。

 全体的には標準化の段階にあり、それはそれで重要な工程ではあるので揶揄するつもりはないし(むしろ期待している)、現在発売されている製品に関しても単品で具体的にどうこういうべきではないと思う。それにしても、冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機、エアコン、はたまたドアや窓の開閉や、電灯のオン/オフなどを要素として、それらを相互コントロールすることで実現されるイメージなどを思い浮かべてみても、あまり楽しくはないのも事実。

 なぜだろう。それはおそらく、これらを言葉に置き換えれば、ホームコントロール、オートメーション、マネージメントというところであり、ひっくるめていえば「管理」とか「効率化」以外の何ものでもないと誰もが悟ってしまうからだろう。もちろん不要だといっているわけではない。逆に、ただ単に裏方的な部分なので「面白い」「楽しい」「ワクワクする」といった感情とは無縁なのは当たり前であり、即座にそれでダメだとか、そんなのいらないだとか結論づけるのは少し早計すぎると感じるだけだ。

 余談だが、日本人はコンポーネントスタイルよりも、合体メカというか一体型というか多機能というか、そんな製品を好む傾向にあるようにも思える。小学生の頃は「とにかくなんでもつけたラジカセ」なんて聞くと、意味なくクラクラしたものだ(私だけか? にしても20年前あたりのラジカセ激戦時代はなんかすごかったよなあ)。だから、「単機能の製品群が相互接続されて連動して機能する」というのにはあまり反応しないかもしれない。で、「全部これに詰め込みました」的な製品には妙に反応しやすい。省スペースという意味もあるのだろう。だからといって、「これ一台あれば、パンツも洗濯できるし、米も洗って炊飯可能。乾燥機にもなるし、お弁当を温めたり、ケーキやパンを焼いたりも。もちろんWebブラウズも可能」なんて複合洗濯機がほしいわけではない、決して……。

 そんなくだらないことを考えつつ、家の中を見回してみる。冷蔵庫も電子レンジも洗濯機も別にフツーのシロモノで、ネットワーク化する予定もない。食料品に関していえば、冷蔵庫が在庫管理して商品を発注したり、電子レンジがレシピを教えてくれたりなんてことは、うちではあるわけないのだが、ただ、セブン・ミールサービスを利用しているので、毎月配布されるメニューカタログを眺めつつ、Webサイト上で発注操作しておけば、必要な分だけパッケージされた食材を配達員の方が持ってきてくれる(注文の締切が前日の午前10時までというのが結構キツいが)。レシピも同梱されているので、それを読みながら料理すればいい。ついでに、お米や牛乳、調味料にデザートなんかも買える。いや、まったくもってネットワーク家電とは関係ないんだけど、まずはこういう流通形態、消費スタイルが広く普及しないと(食材配達サービス自体の歴史は古いが)、「冷蔵庫が勝手に商品を発注」なんて段階にはたどりつかないのも事実だろう。

 で、別に「セブン・ミールはワクワクする」とかいうワケのわからないことを書きたいわけではなく、なんだかんだ言って、自分自身も生活・暮らしには「効率化」しか求めていないわけだし、前述の未来社会像も「管理」「効率化」に属するイメージともいえ、やはり各社のネットワーク家電への取り組みは清く正しい姿勢のようだ。もちろん白物家電以外で、PCをビデオサーバや音楽サーバにも利用しているが、それも特に新奇なわけではなく、iEPGで録画予約を簡略したり、毎週/毎日録画を自動化したいとか、聴きたい音楽CDを膨大なライブラリの中から探すのがおっくうという、なんとも不純な「夢のない」動機・スタイルにすぎない。

 まあ、「コントロール」「オートメーション」「マネージメント」という正統派の展開は、それはそれできちんとした人たちの手に委ねるとして、この連載ではもっとヘンな部分に目を向けて、勝手に興奮してはどうだろうかと考えてみたいのだ。というわけで、次回は「ITエクササイズ用品」などを想像してみる。

関連リンク
▼ECHONETコンソーシアム
▼東芝ネットワーク家電「フェミニティ」
▼セブン・ミールサービス

[浅井研二,ITmedia]



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