リビング+:ニュース 2003/05/20 22:28:00 更新

ビジネスシヨウ2003レポート:基調講演
ユビキタスと、日本経済再生

ビジネスソリューションをテーマとする展示会「ビジネスシヨウTOKYO 2003」が、東京ビッグサイトで開幕した。基調講演には、東大先端科学技術研究センターの廣瀬氏が登場。KPMGフィナンシャルの木村社長も、特別講演を行った

 5月20日、ビジネスソリューションをテーマとする展示会「ビジネスシヨウTOKYO 2003」が、東京ビッグサイトで開幕した。カンファレンスプログラムでは、基調講演として東京大学先端科学技術研究センター教授、廣瀬通孝氏が登場。さらに、KPMGフィナンシャル社長の木村剛氏も特別講演を行った。

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 東京大学先端科学技術研究センター教授の廣瀬氏

 まず壇上に上がった廣瀬氏は、ムーアの法則やギルダーの法則に言及しつつ、昨今のIT業界、通信業界が進歩をとげていることを強調。文字や数字を扱う“キロ”の世界から、写真なども扱える“メガ”の世界、ひいては動画を扱える“ギガ”の世界へと状況が移り変わりつつあるとした。

 同氏は、専門分野である3Dグラフィックスの研究動向などに触れながら、より大きなデータサイズの映像をハンドリングできるようになっていると紹介する。「たとえば、僕がここに来て講演しなくとも、3Dデータを転送すればよくなる」。

 こうした技術を用いれば、たとえば、立体的な模式図を示せるe-ラーニングや、臨場感あるサッカーの試合の中継、といったサービスも実現するわけだ。

 ほかにも、同氏はウェアラブル・コンピュータや、RFタグを利用した街頭での情報発信を紹介しながら、いわゆる「ユビキタス社会」が到来すると説く。「私も関わってる愛知万博では、(大きなパビリオンを建てるのでなく)ホットスポットを利用して特定の領域で展示する、といった取り組みも行う予定だ」と、近未来の情報社会を描いてみせた。

歯に衣着せぬ木村氏

 続いて登場したKPMGフィナンシャルの木村剛氏は、開口一番、「廣瀬先生による最先端のお話の後に、一番遅れている業界の話をしなければならないのは残念だ……」と苦々しく発言。

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 KPMGフィナンシャルの木村氏。内閣府経済動向分析検討チームの、委員を務めていることでも知られる。同氏の講演中、会場は苦笑、爆笑の連続だった

 木村氏はまず、りそな銀行に公的資金が注入された件に言及。残念な結果としつつ「“ガン”が発見されたから、手術して取り除くということ」と説明する。

 「こういうことをすると、『なぜガンを見つけたんだ!』『手術すると痛いじゃないか!』『ガンに気付かないフリをしておけば、いつか消えるんだ……』と主張する人がいる」。そのような態度で、問題を先送りするのではなく、現実を直視した適切な対応をとるべきという。同氏は、今回の件が経済再生の第一歩になりうる、との見方を示した。

あるメガバンクの場合

 同氏は続けて、痛烈な銀行批判を繰り出す。聴講者に対して、唐突に「ここでクイズをします」と切り出した。

 「あるメガバンクに務める、45才の知人が、昨年早期退職制度の募集に応じた。昨今、銀行の経営は苦しいと言われるが、さて、この人の退職金はいくらだったでしょうか? はい、1000万円と思う人は手を挙げて……2000万円……3000万円……」。

 会場では3000万からばらばらと手が上がり始め、5000万円、6000万円を過ぎると手を上げる人がいなくなった。

 「正解は、7000万円です」(笑)。

 怒りを覚えた木村氏が、その知人に不満をぶつけると、「キムラは常識がないんだよ」と逆にさとされたという。その元行員の主張は、以下のようなものだったという。

 「今の自分の給料は、1500万円だ。あと10年も勤めれば、1億5000万円を手にすることができる。その権利を放棄したのだから、7000万円をもらうとはいえ、これは損な話だ――」。はたして、その銀行では早期退職制度に500人を募ったにも関わらず、210人しか応じるものがいなかったという。

 「これを聞いて、本当にあの銀行に入ればよかったとつくづく思った。これでは、“ユビキタスの時代”にはいけない」(同氏)。このような歪みが、さまざまに影響していると主張した。

不良債権処理の問題

 同氏の、銀行批判は止まらない。各行が多額の不良債権を抱えている問題について、その惨状を訴える。

 「不良債権は現在、40兆から50兆円と言われている。そもそも、この数字はあやしくて、アナリストの中には、100兆とも、200兆ともいう人がいる。しかしまあ、一番控え目に見て、40兆円として、名目GDPとの比率は“8%”。昭和恐慌で数十行が破綻した時でも、(不良債権の名目GDPに対する比率は)2.5〜3%だった」。

 一方で、1988年以来、多くの銀行が開示している業務純益(=業務粗利益から、業務を行ううえでかかった経費を差し引いたもの)を見ると、各行は、実は相当の利益を上げているという。

 「バブルで、日本中が好景気に沸いていた時期の、全国の銀行の業務利益が、合わせて3兆5000億円だった。それでは、去年3月の決算ではどうか。3兆5000億円に1兆円プラスして、4兆5000億円ももうけている」(同)。この間、業務純益は一度も3兆円を下回っていないという。

 こうした利益を、40兆円の不良債権の処理にあてても、「まるで問題は解決しなかった」。

問題企業は退場を

 木村氏は、日本経済の再生には、問題企業が市場から退出することが不可欠と、持論を展開する。

 「問題企業は、厳しいようだがやっぱり(経営不振に陥る)それなりの原因がある。それが、債権放棄によって『うわー、債務が軽くなったなー。よし安売りだ』となる。これでは、(値下げ競争で対抗しなければならない)周りの企業すべての収益力が落ちてしまう」。

 同氏はまた、銀行が問題企業に安い金利でお金を貸し続け、一方で中小企業へは御しやすいという理由から、貸し出し金利を上げている、と憤る。

 「だいたい、債権放棄しているような(貸し倒れの危険性が高い)会社に2.0%の金利で金を貸し、私に貸すときは金利は2.5%だ。こんなバカな話はない」。

 同氏は、問題企業の淘汰が進めば、そのすきまで中小企業が育ち、経済が再生するとの見方を示す。「今、日本は人も金も土地も安い。不景気だとみんなが言っているから、コンペティターも少ない。これで腕がふるわなければ、経営者じゃない」と、講演の最後は聴講者を盛り上げた。

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関連リンク
▼ビジネスシヨウTOKYO 2003

[杉浦正武,ITmedia]



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