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2003/05/22 21:40:00 更新 |
データ放送は超ローカル放送?〜NHKの研究所でパネルディスカッション
NHKの放送技術研究所の一般公開では展示のほか、研究発表やパネルディスカッションも行われている。パネルディスカッションでは、NTTや総務省など多彩な顔ぶれが集まった。ここでは、各社がプレゼンを行ったのだが、通信と放送が融合することでさまざまなメリットが生まれるとアピールしていた。
光ファイバによる放送について話をしたのはNTTの井上友二氏だ。NTTでは10年以上にわたって、1本の光ファイバに通信と放送を乗せる技術の開発を進めている。その結果、光多重を用いて、通常の画質なら500ch、ハイビジョン放送なら100ch分を流したうえに、100Mbpsの通信が可能になった。井上氏は光多重に対してこれまでの技術を「電気多重」と表現、「これまでは統合されたサービスを始めようとすると、放送局と通信事業者のどちらが光ファイバの主権を持つかでもめていたが、光多重の場合はそれぞれが周波数を決めて利用するためこのような問題は起こらないだろう」と思わぬメリットが生まれる可能性を示唆した。
しかし、総務省の久保田誠之氏は光ファイバを用いた放送について、いくつかの問題点を提起した。特に、災害時では通信インフラが麻痺してしまうため、放送は非常に重要なインフラとなる。しかし、光ファイバを用いた放送は、災害時では非常に信頼性の低いインフラになってしまうというのだ。また、50年間続いている放送とは違い技術が枯れていないため、平常時においても現代の放送よりも信頼性は低いという。この調子でいくと、将来的に光ファイバで放送を受信する時代になっても、当分は屋根の上のアンテナは残したまま、ということになるかもしれない。
一方、NHKはデジタル放送によって生みだされるあらたなサービスに期待しているようだ。特にデータ放送は、通常のテレビと同じく公共的なインフラを目指しているという。NHKの和崎信哉氏によると、阪神大震災の時にNHKには10万人にものぼる安否情報が寄せられたが、実際に放送で流せることができたのは5万件程度だったという。しかも、放送を用いた安否情報は、ほとんどの視聴者にとっては無関係の情報だ。川崎氏は、「通信網が麻痺しても大量の情報を放送で送れる」「検索性に優れている」などのメリットを挙げたうえで、「データ放送ではこれらの欠点を解消できるのではないか」と結論づけていた。デジタル放送は、これまでよりも少数の視聴者に向けた情報を提供しやすいメディアとして「超ローカル放送」と呼ばれ、かなりの期待を背負っている。
パネルディスカッションの様子。ほか、インフォシティの岩浪剛太氏、松下電器の櫛木好明氏が参加していた
関連リンク
日本放送協会(NHK)
[記事提供:RBBTODAY]