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2003/08/04 14:52:00 更新 |
開発ツールやミドルウェアは買う?作る? 〜ゲーム開発者セミナー
IGDA東京チャプター主催の第5回ゲーム開発者セミナーがお茶の水で開催された。今回のテーマは「開発ツールの方向性」で、ライブラリやツールの自社開発について講演やパネルディスカッションがおこなわれた。
IGDA東京チャプター主催の第5回ゲーム開発者セミナーがお茶の水で開催された。今回のテーマは「開発ツールの方向性」。ライブラリやツールの自社開発について講演やパネルディスカッションがおこなわれた。
自社開発ツールやミドルウェアについての講演では、まず最初にベックの五月女晃久氏が、ネットワーク上のPCを使ってMayaのレンダリングを分散して実行する「M.Ren」について、開発の経緯や機能を紹介した。M.Renは、社内PCの遊休CPU資源を最大限利用しようというもので、フレームをブロックに分割してレンダリングのジョブを割り当てたり、単一フレームをタイル分割して分散レンダリングしたりできるというもの。
M.Renのタイル分割レンダリングデモ。一部分だけテクスチャを変えたときに特定タイルだけ再レンダリングといった使い方も可能
また、トーユーの平田貴光氏は、同社のキネマティックエンジンのグラフィックエンジン高速化技法(Occlusion Culling)について解説をおこなった。Occlusion Cullingは3Dの描画速度を上げるために、見えない部分のポリゴンの計算を捨てることで計算量を減らす技法。同社ではOctreeを採用することで、4フレーム/秒を30フレーム/秒に、といった劇的な改善を達成している。OctreeのPVSテーブルは、AIキャラの可視判定やサウンドの聞こえ具合などにも流用できるという。
PVSテーブルによる対象ポリゴン削減例。右上では見えない階段も演算対象としている。右下はOcclusion Culling適用後
シェードの横田幸次氏は、同社の3Dライブラリとオーサリングツールについての解説をおこなった。1人のプログラマが5年かけて少しずつ強化してきたという同社のオーサリングツールは、PlayStation2など実機を使わずにPC上だけでモーションやモデルのチェックが可能な「PC-Preview」、複数人での開発でプロジェクトの利用するファイルの統合管理(ファイルロックやリビジョン管理など)をおこなう「pj-man」、テクスチャ管理やモーション設定が可能な「Tex-Mapper」で構成されている。Tex-Mapperで変更したデータをただちにPC-Previewで確認できる、という非常に開発効率の高そうなツールだった。
シェードのオーサリングツール。モーションキャプチャデータ(BVH)の取り込みにも対応
その後、ベックの山口氏をまじえてのパネルディスカッションでは外部ミドルウェアと社内ツールについて議論が行われた。壇上のパネラー各氏が口をそろえたのは、「社内で作れるなら市販ミドルウェアを購入する必要はない」という点。この「社内で作れる」というのは、一つには技術的なところで、たとえばサウンドのミドルウェアはドルビーサラウンドなど社内では手に負えないものであり、購入は仕方ない、という。もう一つがスケジュールについてで、新ハード向けのソフト開発で、時間がなければ内製をあきらめて購入するだろう、ということ。
そうでなければ、管理のしやすさやコスト(購入ミドルウェア自体の価格だけでなく、それを開発者が習得するという人的コストも含む)の面から、自社開発が望ましいという。「ころころ変わられては困る」(平田氏)、「会社の視点からすると、人を採るときにツールも入れるというのは二重のコスト」(横田氏)、「ミドルウェア開発者のスケジュールやリスクをゲーム開発者が負うという不条理」(山口氏)といった言葉が印象的だった。
パネルディスカッションは客席からも多数の質問が出て活発なものとなった。左から、IGDA東京チャプターコーディネイターの新清士氏、トーユーの平田氏、シェードの横田氏、ベックの山口立雄氏
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IGDA東京
[記事提供:RBBTODAY]