リビング+:特集 2003/09/22 23:59:00 更新

特集:発進した「カーテレマティクス」の前途とは
トヨタがG-BOOKで狙うもの (1/2)

ブロードバンドの普及、携帯電話の高機能化に伴い、ネットワークに接続するデバイスとしての“自動車”が注目されている。カーテレマティクスの現状と将来性を、4回に分けて探る。

 自動車が、通信機能を持ち始めている。ブロードバンドインフラが普及し、携帯電話が高機能化した今、ネットワークに接続するデバイスの1つとして“自動車”が注目されている。

 既に複数の大手自動車メーカーが、データ通信モジュールを組み込んだ乗用車を販売しているほか、カーナビメーカーも通信機能を内蔵した車載端末を提供し、既存の車両に通信機能を追加させようと目論んでいる。ドライバーを目当てにした、ホットスポットサービスを提供する計画もあり、多くの事業者が「通信業界の“次”はカーテレマティクスだ」との思いを強めている状況だ。

 Living+では、今日から4回にわたってカーテレマティクスに焦点を当てた特集をお送りする。第1回は自動車業界の雄、トヨタ自動車に、情報ネットワークサービス「G-BOOK」の現状と、今後の戦略を聞いた。答えてくれたのは、e-TOYOTA部の企画室長、藤原靖久氏だ。

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G-BOOKの車載端末(写真は2002年8月の記事より抜粋)

現在、1万7000ユーザー

 G-BOOKとは、CDMA 2000 1xベースの専用データ通信端末を利用した、通信料込みの定額情報提供サービス。ユーザーは無料である程度の周辺情報検索を行えるほか、月額数百円を追加すれば、各コンテンツプロバイダの提供する映画情報、グルメ情報、宿泊施設情報、天気情報などを取得できる(記事参照)。

 また、通信機能を利用してメール、コミュニティといったサービスも利用できる。ひとことでいえば「iモード型」のサービスだ。

 昨年秋の開始当初は、「WiLL CYPHA」に標準搭載するという位置付けだったが、その後富士重工業にも採用されるなど(記事参照)、対象車種を拡充。G-BOOK対応カーナビなども用意されており、約50車種で利用可能となっている(詳細はG-BOOKのサイト参照)。

 藤原氏は、現在G-BOOKユーザーの数は1万7000人ほどだと話す。同社の販売台数を考えると少ないようにも思えるが、車種が増えたのはまだ最近になってからのこと。ユーザー数の拡大は、これからとの認識のようだ。

どんなコンテンツが人気か?

 G-BOOKユーザーがよく利用するサービスは、やはりメールだという。G-BOOK専用メールのほかに、無料の「Eメールデリバー」サービスを利用すれば、会社で使うメールアドレスに届いた新着メールも車内で確認できる。ほかにも、コミュニティサービスなどの人気が比較的高いという。

 有料コンテンツでは、「特にキラーコンテンツはない」(藤原氏)。ユーザーの嗜好もバラバラで、抜け出た人気コンテンツはないようだ。ただし、その中で予想以上に好評なのが、“カラオケコンテンツ”だと話す。

 カラオケコンテンツとは、要はMIDIデータをダウンロードして視聴できるもの。iモードの着メロ同様に、それなりの人気があるようだ。「実際にユーザーがカラオケとして利用しているかどうかは分からないが、車内のBGMとして流している場合もあるのでは」(同)。

 なお、トヨタが自動車メーカーとして“責任を持って”提供するのは、セキュリティサービスとなる。これは、たとえばセンター側に車の位置を記録させて、盗難時に車の位置を調べたり、駐車しているはずの車にエンジンがかかった際にユーザーの携帯に通知を行ったりするサービス。トヨタはこうしたサービスを主体的に運営し、ほかの周辺的なコンテンツはコンテンツプロバイダと提携する、という手法をとっている。

コンテンツの可能性は?

 今後、G-BOOKでどんなサービスが追加される可能性があるのだろうか? 

 たとえば、G-BOOKでは現状、運転中に周辺情報をプッシュ配信するサービスは提供していない。しかし、通信機器が実装するSMS(Short Message Service)の機能を利用すれば、「こちらからコマンドを送って、車側からデータをリクエストさせる」といった使い方が可能となる。つまり、プッシュ配信も行える。

 そうなると、広告的な情報配信も可能に思えるが、藤原氏は「それにはまだ、規模が足りない」と話す。1万7000ユーザーしか登録していないサービスでは、情報を配信したい広告クライアントがつかないだろう、との考えのようだ。

 また、G-BOOKによるデータ通信機能を活用して、エンジンやトランスミッションなど車の基本機能を制御する――という、使い方も考えられる。車の情報をネットワーク経由でサーバに送り、容易に把握できるようにするわけだ。「データを入れ替えると、サスペンションの『かたさ』が変わる」(藤原氏)などのサービスも考えられる。

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[杉浦正武,ITmedia]



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