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2003/12/16 23:10:00 更新 |
短期集中連載:東大公開講座より〜
「ゲームをするからひきこもりになる」は因果関係が逆
東大での公開講義を紹介する短期集中連載、第2回は「ゲームとひきこもり」の関係を探る。ゲームをやればやるほど、人はひきこもりになるという議論は、正しいのだろうか?
東京大学で行われた公開講義の内容を紹介する短期集中連載、第2回は「ゲームとひきこもり」の関係を探る。ゲームをやればやるほど、人はひきこもりになるという議論は、正しいのだろうか?
本稿は、お茶の水女子大学大学院、人間文化研究科の坂元章助教授が行った講演「テレビゲームと子供たち−社会心理学の立場から−」にもとづくもの(前回の記事参照)。同氏は、社会情報学/社会心理学の立場から、ゲームを研究している。
ゲームをやると、子供の人間関係は円滑になる
まずは、ゲーム反対論者の意見を確認しよう。これは、「ゲームをやることで、人間関係の技能、意欲が阻害される」というもの。
ゲームの世界で頻繁に遊んでいると、人は実生活で他人とつきあうことが面倒になる。自宅にこもりがちになり、ついには不登校になって、仮想世界で気にいったキャラクターとばかりつきあうようになる――、という主張がある。
しかし、坂元氏はこの説が「研究では支持されない状況にあると思う」と話す。
「(ゲームをやることで、対人コミュニケーション能力に)悪影響は見られていない。むしろ、テレビゲームの話題が豊富な子供、ゲームが上手な子供は、周りが寄ってきたりする」。ゲームを媒介にして、子供のコミュニケーションが円滑化する傾向があるという。
ただし、これは研究対象を小中学生などに絞った場合。大学生ぐらいになると、前述の“悪影響”もなくはないようだ。
「大学生ともなると、やはりゲームが上手いだけで尊敬を集めるということもないでしょうから……」(笑)。
とはいえ、一般に“ゲームをやるからひきこもりになる”とはいえない。むしろ、“ひきこもり傾向のある子供がゲームをする”という方が正しいと考えられているようだ。
「逆方向の因果関係がある。もともと、円滑な人間関係を構築するのが得意でないひとが、ゲームをやるようになる」。
むしろインターネットで当てはまる?
坂元氏は続けて、実は同様の議論は“インターネット”でもあるという。インターネットに熱中するあまり、対人コミュニケーション能力が劣ってくるのでは、との指摘があり、研究者の間でも注目されている。
最近では、ネット接続が前提のオンラインゲームなども増えつつある。こうなると、“ネットゲーム”であれば、人をひきこもりにするだけの影響力をもっているのでは、とも思えてる。実際、坂元氏も紹介するように、海外ではネットゲームを長期間連続してプレイし、ついには死に至った例もある(記事参照)。
だが、坂元氏はやはり、あらゆるユーザーにあてはまる話ではないと話す。一種のネットゲーム中毒に陥るユーザーもいるが、それは一部の人間だとする。
「たとえていうと、アルコール中毒に近い。アルコール飲料は、世間で多くの人間が飲んでいるが、中毒になるのは一部の人間だ」。過度に心配する必要は、ないことを示唆した。
ゲームのやり過ぎをいましめる例として、一時話題を集めたのが「ゲーム脳」の問題。これは研究者の間で、どのようなとらえられ方をしているのか。明日は、この点に切り込んでみたい。
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[杉浦正武,ITmedia]