[年末スペシャル]2001年のブロードバンドインターネットを振り返る
2001年は、ブロードバンドインターネットにとって、まさに「元年」というにふさわしい年だったのは間違いない。ADSLは一気に利用者を獲得し、対するケーブルインターネット事業者も速度アップやコンテンツの強化を進めている。その反面、さまざまな問題が浮き彫りになった年でもあった。
■ 拡大の一方、一年中何かが問題になり続けたADSL ■
明るい話題の最たるものは、やはりADSLサービスの急速な拡大とスピードアップだろう。2000年末でわずかに9,723回線(NTT回線使用分)だったDSLユーザが、この1年で150万回線にせまろうとしている。
この拡大にはいろいろな要素はあるが、今年前半の増加についてはNTT東西の功績が大きいと考える。お堅いコモンキャリアのNTTがフレッツ・ADSLとしてサービスを開始したことで、それまでADSLにつきまとっていた「電話線で無茶するキワモノ」的なイメージが薄れた。512kbps〜640kbpsが中心だったADSLを1.5Mbpsに引き上げたのも、フレッツ・ADSLの功績だ。そして後半の話題をさらったのがYahoo!BB。ADSLサービスを一気に8Mbpsにシフトさせた上、料金レベルをそれまでの5千円前後から2〜3千円にまで引き下げた。
一方で、ADSLの急速な拡大がいろいろな問題を起こした1年でもあった。今年前半、モデム不足が原因で各事業者がサービス提供に遅れを生じさせた。NTT東西は、12月に独占禁止法に関してふたたび警告を受けたほか、情報公開が遅いというADSLベンチャー各社のNTTへの不満はまだ続いている。また、Yahoo!BBも発表後いきなり問題を抱え込んだ。ずさんな計画からサービスインの大幅遅延続発。これにともなうユーザからの苦情対応のまずさ、そしてコロケーションリソース占拠とそれに対するNTTと総務省の対応は記憶に新しいところだ。終わってみれば、今年一年、ADSLではずっとどこかで問題が起き続けていたことになる。
■ 着実なCATV、助走期間だった光ファイバーと無線 ■
ADSL以外のインフラによるブロードバンドも、着実に拡大している。特にCATVインターネットについては、アクセス速度のアップが著しい年だった。イッツ・コミュニケーションズ(旧 東急ケーブルテレビジョン)など下り速度の制限を解除したケーブル事業者も出てきており、速度でADSLを大幅に上回ることでアドバンテージを確保しようという方向性が明確になっている。ADSLとの差別化のためにコンテンツ配信に力を入れる事業者も多い。
FTTHや無線アクセスについては、各地で商用サービスが開始されたもののメインストリームにはまだ遠いようだ。ただ、無線についてはホットスポットによるインターネット接続サービスが各所で実験中で、ハイファイブは2002年にも商用サービスの開始予定という。また、DDIポケットによるPHS定額接続サービス「AirH”」も、非常に人気を集めている。
■ 加速したデジタルディバイド ■
高速化の進む各種のブロードバンドサービスだが、解決の目処の立っていない問題もある。地域格差、デジタルディバイドである。ブロードバンド以前は、デジタルディバイドといえば「パソコンが使える人」と「パソコンが使えない人」の間で広がる差を指していたが、今はむしろブロードバンドがある・ないというデジタルディバイドの方が注目を集めている。これは、速度の違いがインターネットの使い方そのものが変化させるほどの差だからだ。アナログモデムとISDNのときはせいぜい倍程度の速度差で済んでいたものが、たった1年で100Mbps光ファイバー vs 64kbps ISDNという時代になってしまったのだ。
この問題は、つまるところ都市部と地方の人口密度の違いと年齢別人口構成の違いからくる市場規模の極端なまでの差が原因で、なかなか解消は難しい。以前にRBBTODAYでこの件についてアンケートをとったときには、政治への期待と新技術への期待が高かった。人口過疎地域については、利益を追求しなければならない民間企業にとって現時点で手が回らないのは仕方がない。しかし、このまま「地方は遅いいまま」が図式として固定するのは望ましくなく、何らかの積極的な政策を期待する声が高かったのも当然だろう。
■ 2002年は一転して平穏な年に? ■
いろいろな意味で激動だった2001年が終わろうとしている。では2002年は?といえば、今年とはまるで違う、見た目には比較的地味な年になるのではないかと思われる。
9月11日の世界貿易センタービルへのテロ。その直後からアクセスが集中した米国メディア系サイトは、それまでのリッチなページではトラフィックを処理しきれなくなりダウン。再開したときには、テキスト中心にデザインを切り替えていた。ブロードバンドの普及は、このようなトラフィック集中を簡単に発生させてしまうが、こうした状況への対応はサーバやバックボーン側で行われるため、ユーザからは見えにくい。
エンドユーザに見える変化としては、すでに商用サービスが開始されているADSL・CATV・FTTHについての、エリア拡張が中心になりそうだ。また、IPv6への漸進的な移行も進むはずだ。2002年のブロードバンドは、無線とFTTHが注目点となるだろう。