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» 2018年04月27日 11時47分 公開

物流現場の「救世主」登場:「第二の松下幸之助に」 パナソニック出身のベンチャー社長が15年かけてパワードウェアを作った理由 (3/4)

[中西享,ITmedia]

介護市場に参入しない理由

 パワーアシストスーツの導入先として注目されているのが介護現場だ。筑波大学の山海嘉之教授が開発したサイボーグ型ロボット「HAL」が昨年10月に発売された。「HAL」を装着することで、特に下肢のまひした患者のリハビリ用として効果があると言われ注目を集めている。大和ハウス工業が4月に全国の工場に「HAL」を30台導入、重量物を扱う作業現場の負担を軽減したい狙いがある。

phot HALは介護分野ではリハビリ用に提供されている(サイバーダインWebサイトより)

 一方、藤本社長は「パワーアシストスーツは常時着用が困難であり、介護現場に導入されるかどうかについては懐疑的だ」という。その理由としては、高額なパワーアシストスーツを購入するだけの予算のある介護施設がまだまだ多くないことと、建設や物流現場のように作業効率の改善を求められていないため、導入しても生産性が向上したことが明確にならない点を挙げる。また、パワーアシストスーツは介護現場では、高齢者を抱きかかえる際に使用が想定されるが、繰り返し作業ではないため、パワーアシストスーツの恩恵も受けにくい。

 「しっかり分野を定めて市場を作っていかなくてはならないと思っています。使えない商品を、購入していただいた顧客からきちんと『使えない』と言ってもらうことが次につながると思っています。介護分野には機器を導入するために国からの補助金も多くあります。しかし、そうした導入補助は、単に導入することが目的になりがちで、お客さんが購入する時も補助が出ているために高い値段で買ってもらえる傾向にあります。介護分野に参入すれば大きな売り上げをあげられたのかもしれませんが、それはパナソニックがもつベンチャー・スピリットとは反すると感じ、社員にも理解してもらいました」(藤本社長)。

第二の松下幸之助を目指して

 藤本社長はパナソニックに入社する前は大阪大学で原子力工学の核融合を専攻していた。本来ならば、専門を生かして電力会社などに就職するところだった。しかし、核融合技術の実用化の難しさを目の当たりにして、就職は原子力とは縁のない会社を選んだ。

 入社してすぐにモーター部門に配属されたが、いずれは創業したいという思いに駆られて社内のベンチャー制度に応募した。それまでロボットとは縁がなかったものの、大好きだったSFドラマ「スタートレック」に登場する電子機器を作りたいと提案したところ、当時の担当役員に認められて「合格」した。創業の話になると藤本社長は「原動力はスタートレックです」と笑みがこぼれる。

phot 藤本社長は15年前からパナソニックから出向し、会社を率いている

 パナソニックから独立して起業するため、「パナソニックスピンアップ・ファンド」から1億8000万円の資金提供を受けて創業した。このファンドの支援を受けて立ち上がった企業はすでに40社ほどで、パナソニックの元社員だった菅原淳之社長が創業し、デジタルサイネージ事業で成功したピーディーシーなどがある。

 ファンドの狙いは「第二の松下幸之助を目指せ」というもので、これだけの資金を提供してもらったからには、失敗は許されないという見えないプレッシャーがある。現在はパナソニックが69.8%、三井物産が29.9%の株式を保有しているが、起業したからには上場を目指したいのは当然だ。

 パナソニック出身の企業であるがゆえに製品の品質と安全性には特に気を配っているという。ベンチャー企業である「ATOUN」の社長といえども、パナソニックの大看板を背負っている。

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