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» 2018年10月26日 08時15分 公開

『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学【前編】:ドラゴンボールの生みの親 『ジャンプ』伝説の編集長が語る「嫌いな仕事で結果を出す方法」 (5/5)

[今野大一,ITmedia]
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発想が1つあればいい

――ビジネスマンなり読者もそういうマインドを持つべきなのでしょうか?

 さあ、それは分からない(笑)。僕はこのやり方で生きてきただけで、人にお勧めするかどうかはまた違う問題です。なぜなら人それぞれキャラクターが違うから。ただ、僕は良く新入社員に「なぜクレヨンや絵の具はあの数だけ色があると思うか?」と聞くのです。何でだと思います? 色が少ないと描く絵が限られるからです。いろんな絵が描けるように多くの色の数があるわけです。だから一色に限る必要はないのです。

――ところが今のビジネスの世界では、特に大企業になればなるほど画一的になり、なかなか個性が尊重されるようにはなっていない印象があります。

 それは個性を重視していない、日本の学校教育全体が間違っているからだと私は思います。例えば日本で最初に学ぶ言葉は「前へならえ」です。これは前例に従うという意味とともに、教師が集団を思うままに動かすという軍隊教育の一環なのです。

 一方、海外では「家から好きなものを持ってきて、なぜそれが好きなのかを皆の前で説明してみて」というプレゼンから授業が始まるんです。自分が好きなものを他人に伝える教育の在り方と、「前へならえ」という発想を起点にした教育とでは天と地ほどの差があります。

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――編集者の仕事はプレゼンの要素も多く、海外の教育が目指すものに近いのかもしれないですね。

 私は、編集者の仕事は「思い付きが企画」で「雑談がプロジェクト」だと思っています。だから仕事で考えたり行動したりすることも、実は決して「たいしたこと」ではないのです。大層に「仕事」だと考えるから、発想もこり固まってしまっていろんなことができなくなるのですよ。『ドーベルマン刑事』の例を話しましたが、1つの思い付きを作家に伝え、実際にやってもらったことで1位が取れたわけですよね。

 思い付きやアイデアが1個あれば良いんですよ。そのために、後から思えばエッチビデオを間に挟んで3カ月間やりとりをしたことが、彼と話ができる下地になったということです。漫画そのものも大事ですが、いかに人に対する関心を持てるかも大切ですね。結局漫画も作家、つまり「誰が描くか」によって変わってくるものなのです。

――10月29日(月)公開の【中編】(関連記事を参照)では、鳥嶋さんが『ドラゴンボール』の作者である鳥山明さんと出会った経緯や、『ドラゴンボール』の人気が低迷した際に、いかにしてその困難を乗り越えたのかについてお届けしています。

――10月30日(火)公開の【後編】(関連記事を参照)では、鳥嶋さんが漫画雑誌の現状をどのように見ているのか、また白泉社の社長としていかなる人材育成をしてきたのかを聞き、鳥嶋さんの組織論に迫っています。

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