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同性愛公表のパナソニック取締役ベイツ氏「LGBTへの差別は日本経済の損失」若者のロールモデルになりたい(4/5 ページ)

» 2018年12月23日 07時00分 公開
[猪瀬聖ITmedia]

日本の法律ではパートナーの永住権が認められない

――日本社会は欧米に比べて性的マイノリティーへの偏見が根強いといわれています。長年、日本に住んでいてどう感じますか。

 米国でも性的マイノリティーに関する世論や制度が大きく変わったのはつい最近です。例えば、08年にカリフォルニア州で結婚したと言いましたが、当時は連邦レベルでは同性婚が認められていなかったので、米国籍でない私のパートナーは、ビザの取得などさまざまな面で不便なことがありました。そうした差別が解消されたのは、15年に連邦最高裁が同性婚を認めてからです。

 私が育った1960年代、70年代は性的マイノリティーに対するひどいいじめが横行していました。LGBTという言葉もなかった。しかし、性的マイノリティーに対する差別の問題がだんだんメディアで報じられるようになり、裁判も起きて、政治家も少しずつ議論し始めました。その議論の輪がだんだん大きくなり、社会が大きく変わり始めたのです。

 米国で性的マイノリティーに対する差別がひどかったのは、同性愛を認めないキリスト教の影響もあると思います。日本にはそうした宗教的な背景はないので、かつての米国のようなひどい差別はありません。

 ただ、やはり日本はOECDやG7諸国の中で比較すると、性的マイノリティー問題への取り組みは遅れていると感じています。一番の問題は、欧米の多くの国では認められている同性婚が認められていないことです。

 婚姻関係が認められていないため、例えば、私の2人の子どもの親権は現在、私のパートナーにあり、私にはありません。今現在、それで何か問題が生じているということはありませんが、子どもが万が一病気で入院したりしたときに、家族以外は面会ができないなどの問題が起きる可能性があり、とても心配です。

 また、配偶者ビザも日本ではとれません。私は日本の永住権を持っているので、本来なら私のパートナーも配偶者として永住権がもらえるはずなのに、日本の法律ではもらえない。従って、私のパートナーは定期的にビザを更新しなければなりません。そのたびに、何か問題が起きたらどうしようと不安になります。

 私たちはまだ恵まれているほうですが、私の知り合いには、ビザの問題などでパートナーと別れざるを得なくなったり、一緒に海外に移住してしまったりした人が結構います。

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