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“ゴーン予備軍”は存在する――「怪物」を生まないためにゴーン報道の第一人者が語る【後編】(3/4 ページ)

» 2019年04月11日 06時00分 公開

「ゴーン予備軍」はいる

――日本の財界からは、ゴーン前会長が寄付をあまりしなかったという点でも、やはり「お金」絡みの批判が挙がっているようです。

井上: 自分のポケットマネーで寄付をするという感じではあまりなかったようですね。企業の創業者で、キャピタルゲイン(株式などの売買差益)によって生涯使い切れないほどのお金を持っている人が、教育事業などに寄付するケースはよくあります。例えば日本電産創業者の永守重信さんは、エンジニア教育を強化するため大学に私財を投じています。

 ただ、ゴーンさんは創業者ではないので、財団を作ったりするほどのお金は持っていなかったのではないでしょうか。また、身銭を切るタイプでもなかったのではないかと思われます。複数の国で多民族・多言語の中で生活する中で、「信頼できるのはお金」と、執着する気持ちが強くなったのかもしれません。

――今回の一連の事件は、果たして日産社内の単なる「お家騒動」や「クーデター」としてとどめていい問題には思えません。日本の多くの会社組織でも起こり得る話のように感じます。

井上: トップへの忖度(そんたく)は権力を腐らせる危険があり、モンスターを生みかねないというのが教訓です。そして、日産で起きたことは他の日本企業、社会全体で起きるかもしれない。実際に「ゴーン予備軍」がいるとみられる会社もあります。

 20年以上、上場企業で経営トップとして利益を出し、メディアにも持ち上げられてきました。でも、それでも本当にその経営者がまっとうな経営をやっているかどうかはやはりチェックされるべきなのです。

 (粉飾決算事件で有罪となった)オリンパスの菊川剛元社長もメディアから褒められていましたが、ふたを開けたらひどいことをやっていた。(利益のかさ上げが問題になった)東芝の故・西田厚聰元会長だって褒められていたのです。本当に経営者が何をやっているのか、メディアは見極める必要がある。

 いち市民・いち消費者も、自分の勤めている会社や組織が本当に大丈夫なのかどうか、疑問に思う力が必要だと感じます。

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