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“ゴーン予備軍”は存在する――「怪物」を生まないためにゴーン報道の第一人者が語る【後編】(4/4 ページ)

» 2019年04月11日 06時00分 公開
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専門性のある「プロ」になれ

――納得できる一方、給料や人事権といった“生殺与奪”を経営者に握られているサラリーマンには、ちょっと難しい姿勢であるとも感じます……。

井上: これは個人の働き方ともかかわりますが、自分が専門性のある「プロ」になることで、今の会社で滅私奉公しなくてもよそで(自分の能力を)買ってくれるところがあるような人間になることが大事ではないでしょうか。たとえ組織に意見した結果、粗末に扱われてもよそに行けるわけですから。

 今の勤務先の価値観にどっぷり漬からず、自分の人生観をきちんと持っている人が社員にいれば、こういう問題は起こらないと私は思うのです。今は経済が縮小していて再就職はしづらい、あるいは長いものに巻かれろという考え方もありますが、自分を磨いてさえいれば、拾ってくれる人はきっと出てくるものではないでしょうか。

 ならば、組織の“モンスター”なんて怖くないのです。企業のトップがモンスターでも、せいぜいやれるのは左遷して冷や飯を食わせるくらい。でも、日産の西川広人社長たちはゴーンさんと差し違える覚悟が無かったのですが。

 私も40歳で会社(朝日新聞社)を辞めました。サラリーマンというのは楽な部分もありますが、定年後に「本当に自分の人生がハッピーなのか」とも、思えてしまったのですね。

photo 井上さんは40歳の時、会社を辞めた『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)

――本書でも必ずしも日産の中で上におもねるばかりでなく、衝突したり社外に飛び出したりした人も登場します。

井上: 確かに、日産にもそういう人はいました。ゴーンさんにたてついた人も、ケンカした訳ではないけれど、外に出て成功した人もいます。そういった人々はプロ意識が高い。会社ではなく、あくまで自分の「専門性」に属している。そんな人が増えれば、“モンスター”は生まれにくくなるのです。

 組織の中には、コンセンサスや忖度(そんたく)をいい意味でしない人が、「かく乱要因」として一定数いないといけない。そうでないと、本当の意味での組織の多様性が無くなってしまうのです。

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