コラム
» 2019年05月16日 08時20分 公開

役割分担、ついにここまで:「管理職やリーダーの仕事すらアウトソースする時代」がやってきた (2/2)

[安達裕哉,Books and Apps]
前のページへ 1|2       

優秀なメンバーには優秀なリーダーが必要

 実際、Googleも同様の課題意識を持ち、「効果的なチームとは何か」という問題に正面から取り組んでおり、チームの効果性にとって重要な因子が以下の5つであると主張している。

1.心理的安全性:

心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうか。

2.相互信頼:

相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティーの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。

3.構造と明確さ:

効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。

目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。

4.仕事の意味:

チームの効果性を向上させるためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。

5.インパクト:

自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。

(参考:「効果的なチームとは何か」を知る

 逆に、Googleが「チームのパフォーマンスに関係がない」と主張する因子は、次のものだ。

  • チームメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り、働くこと)
  • 合意に基づく意思決定
  • チームメンバーが外交的であること
  • チームメンバー個人のパフォーマンス
  • 仕事量
  • 先任順位
  • チームの規模
  • 在職期間

 もちろんこれは、Googleの社員を対照としたリサーチであり、全労働者の中のごく一部の、“極めて知的で有能な労働者に当てはまる条件”と考えたほうが良いだろう。

 だが、これらの結果は、優秀なメンバーに対しては「普通の会社」で行われているような、“リーダーが数字に集中し、メンバーに圧力をかけて働かせる”だけではチームをうまく運営できないことを示している。

 当たり前だが、優秀なメンバーには、優秀なリーダーが必要なのだ。

「失敗できない組織」は廃れていくのみ

 「チームの効果性にとって重要な5つの因子」の中でも重要なのが、「心理的安全性」というキーワードだ。なぜかといえば、知識労働において最も重要な「失敗からの学び」に大きな影響を与えるからだ。

 人は、心理的安全性が確保されない環境では、失敗を恐れて大胆な取り組みに踏み切れない。その結果、“失敗しないような仕事”ばかりしていると、貴重な学習の機会は永遠にやってこない。

 「失敗の科学」という書籍を著したマシュー・サイド氏は、こんな問いかけをしている。

  • あなたは判断を間違えることがありますか?
  • 自分が間違った方向に進んでいることを知る手段はありますか?
  • 客観的なデータを参照して、自分の判断の是非を問う機会はありますか?

 全て「いいえ」と答えた人は、ほぼ間違いなく学習していない。これは、自明の理だ。モチベーションや熱意に問題があるわけではない。問題は、“暗闇でゴルフの練習をしているかのような“その「やり方」にある。

 つまり、リーダーには次のような責務があるというわけだ。

  • メンバーに学習を促すため、心理的安全性の確保をすること。
  • 心理的安全性を確保するため、メンバーと適切なコミュニケーションをとること。
  • メンバーと適切なコミュニケーションをとるため、十分な時間をコミュニケーションに割くこと。コミュニケーションスキルを身につけること。
Photo

 リーダーがメンバーとのコミュニケーションに十分な時間を割くことができなかったり、そもそもリーダーのコミュニケーションスキルが低かったりすると、そのチームは「学習しない、知識労働に不向きな組織」になってしまう。

 その「ミスマッチ解消の手伝い」をするのが、エールのような「社外の相談相手を提供する会社」――というわけだ。

 今後、仕事が高度になるにつれ、リーダーの業務の一部をアウトソースする会社と、アウトソースを受ける会社がますます増えるだろう。それこそ、従来の「管理職」の定義をあっという間に塗り替えてしまうほどに。

安達裕哉プロフィール

1975年東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。Twitterアカウントはこちら


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.