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» 2019年05月23日 05時00分 公開

フジ『ザ・ノンフィクション』プロデューサーが明かす「人殺しの息子と呼ばれて…」制作の裏側「視聴率No.1宣言」をする真意(3/5 ページ)

[田中圭太郎,ITmedia]

「インタビューだけで番組ができる」と確信

――息子はインタビューに対して流暢(りゅうちょう)に話しています。なぜこれほど話すことができるのでしょうか。

 なぜ彼がここまで言葉を持っているのかについては、当初、僕も違和感を持ちました。言葉で親族を支配していった、松永死刑囚の息子だからなのでしょうか。でも、壮絶な人生を孤独に生きてきたわけですから、自分なりの言葉を持っているのだと思うようになりました。

――チーフ・プロデューサーである張江さんが自ら取材されたのはなぜですか。 

 自分がやるしかないと思いました。自分が制作した番組に対して文句を言ってきたので、自分で聞いて、取材しようと思いました。

――「息子」1人の発言だけに乗っかることの怖さはありませんでしたか。また、発言の確認や周辺取材はしましたか。

 腹をくくろうと思いました。あれだけの大事件を起こした松永死刑囚と緒方受刑者の子どもですから、1時間では、語り尽くせないだろうと思い、他に取材はあえて一切しませんでした。

 ただ、インタビュー直前に、息子の後見人の男性と話をしています。その方は、相当不安だったようで、3時間くらい話をしました。周辺取材をすることも確かに必要なことだとは思いますが、これまでの経験と自信から、インタビューだけで番組は作る事ができると思っていました。

――これまで取材をした経験では、虐待を受けて大人になった人は、嘘(うそ)をついたり、大人を試したりするケースがあります。なかなか1人のインタビューをよすがに番組をつくるのは、怖い部分もあります。後見人の先生の話以外に、裏をとったことはありましたか。

 その質問は、いろいろなところで聞かれます。自分が取材者として何十年もやってきたカンでしかないです。嘘をついていないのかなんて息子に聞きませんでした。話を聞いていると、本当なのかなと感じることもあって、そこは嘘じゃないと信じるしかない。嘘だったら僕が責任をとればいい。僕が腹をくくればいいだけです。そうしないと、こういうすれすれの微妙な番組が出てこないのではないかと思います。問題があれば責任をとればいいと思っていました。

phot 流暢に話す「息子」が張江氏にフランクに話す場面も

――「息子」は事件やその後のことを、張江さんより前に、誰かに話していないのでしょうか?

 後見人には話しています。自分の悩みをぶつけていたそうです。後見人は、一度生活保護を受給させたと話していました。でも一緒に暮らしたことはなく、金を貸したことはないそうです。

 加害者の家族をどうするか、番組ではその点を喚起しようとしたところもありますが、今、わが国では、そこまでの議論にはなっていません。考えていかなければいけない、大事なテーマだと思っています。

――最後のナレーションで「これからも見守りたい」という言葉がありましたが、継続取材をしているのでしょうか。

 継続取材のタイミングは、2つあると思っています。1つは松永死刑囚が死刑になったときにどうしようかと。もう1つは、息子が世間に顔を出すとき。いつ、顔を出せるのか、腹をくくるときがくるのかどうか。この2つのタイミングで、何を取材するか考えています。

 重いものを背負った人の取材は、心のエネルギーも消耗します。でも、この業界、テレビや報道ってそういう仕事じゃないですか。いまも継続取材をしている人はいっぱいいます。御巣鷹山の日航機の事故でも、ご遺族の方とも今もつきあっています。これは宿命ですよね。その人と向き合うことが仕事というか、使命だなと思いますよ。

phot 張江氏は「息子」を「これからも見守りたい」と継続取材も考えている

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