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» 2019年05月31日 06時00分 公開

店舗には行かない:世界でキャッシュレス化が加速 薄れる銀行の存在感 (1/2)

先日、米国で開かれた会議の席上発表された、ボストン周辺の若者の生活パターンを聞いた中で、やや衝撃的だったのは、若者の3分の2強は「生まれてからこれまで銀行の店舗に足を踏み入れたこともなく、かつ今後を展望しても、店舗には行かないだろう」と答えたということだった。

[SankeiBiz]
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 先日、米国で開かれた会議の席上発表された、ボストン周辺の若者の生活パターンを聞いた中で、やや衝撃的だったのは、若者の3分の2強は「生まれてからこれまで銀行の店舗に足を踏み入れたこともなく、かつ今後を展望しても、店舗には行かないだろう」と答えたということだった。(国際通貨研究所理事長・渡辺博史)

 もちろん、カード決済や日本ではあまり見られない小切手決済が中心の米国で彼らが物理的に店舗に赴かないことはさほど意外ではなかったが、これらの2種の決済手法では銀行に口座を持つことが前提になっていた。

 中国でも、空港から市内へのタクシー利用で、人民元紙幣で払おうとしても、「アプリでしか代金は受け取れません」と言われ往生した人も多いが、この例でもアプリ決済は中国国内の銀行口座の保有をベースにしている。

口座介さず決済

 しかし、近時ケニアなどで行われているアプリ決済は、銀行口座を介さないものとなっている。比喩が妥当かどうか分からないが、「ネットワーク化されたプリペイドカード」のようなもので、自国通貨表示のポイントを自国通貨で購入して直ちにモバイル端末のアプリに入れ、後はそのポイントを商品・サービス購入の際に店頭において端末同士で決済する。売り手側では決済のための固有端末を別途購入・準備する必要もなく、買い手側も決済手段が使える特定の系列店舗を探す必要もなくなる。今や人口の半分以上がこの決済手段に乗っているという。

 貧困層も含めあまねく金融サービスへのアクセスを保障しようという「インクルーシブ・ファイナンス」についてのこれまでの議論では、段階を追って(1)すべての人に銀行口座を持たせよう(2)すべての人に安価な送金手段を提供しよう(3)すべての人に高い利回りの金融手段にアクセスさせよう−という手法が主流であった。

 しかし、現状を見ると、(2)を誘因として新たに持ち込まれたデジタル・ペイメントの手法が、(1)に掲げた銀行口座保有の意義を無意味化させてきている。これまでの議論では、開発途上国に整備されていない金融機関の店舗網を、効率的に集約しつつもいかに安価に確立するかに力点が置かれていたが、今やそれは不要になった。安定的、かつ廉価な電力供給さえあれば、電波はいわば勝手に飛んでいるので、多少の発信局の増設で済む、という状態はシステムインフラ整備に必要とされる金額を劇的に減少させている。(3)の課題も、世界的に長期化する「超低金利」の世界ではあまり必要性が感じられない。下手に高利をうたう金融商品は、半ば詐欺だとみなされる現状では、1年分の所得金額以下の規模の投資に高い利回りが生じることはない。

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