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» 2019年09月18日 16時59分 公開

宇宙(そら)へ挑む“ガンプラ” 五輪応援に極限環境対応の工夫詰め込む

 2020年東京五輪・パラリンピックの期間中、人気アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ「ガンダム」と「シャア専用ザク」(シャアザク)の小型模型を宇宙に上げる計画が進行している。宇宙からガンダムがメッセージを送るのだ。宇宙は想像を超える過酷な環境で、「市販されているガンダムのプラモデル(ガンプラ)をロケットに載せればいい」とはいかない。4日にお披露目された両機の模型には、「地球連邦軍V作戦」並みの工夫が詰まっていた。(静岡支局 石原颯)

[産経新聞]
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 2020年東京五輪・パラリンピックの期間中、人気アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ「ガンダム」と「シャア専用ザク」(シャアザク)の小型模型を宇宙に上げる計画が進行している。宇宙からガンダムがメッセージを送るのだ。宇宙は想像を超える過酷な環境で、「市販されているガンダムのプラモデル(ガンプラ)をロケットに載せればいい」とはいかない。4日にお披露目された両機の模型には、「地球連邦軍V作戦」並みの工夫が詰まっていた。(静岡支局 石原颯)

photo 宇宙へ飛び立つ「ガンダム」(右)と「シャアザク」=4日、静岡市葵区(石原颯撮影)

精巧な出来栄え

 宇宙へ挑むガンダムとシャアザクは4日、静岡市内のバンダイホビーセンターで宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士、野口聡一さんと金井宣茂さんが見守る中、その姿を現した。

 全長は慣れ親しんだガンプラより一回り小さい9センチほど。細部まで精巧に作り込まれたたたずまいだ。目にはLEDが取り付けられ、一部開発中だが、最終的には五輪マークの五色に発光するという。

 機動戦士ガンダムファンだという野口さんは「シャアザクのくすんだ感じがうまく出ている。プラモ技術が宇宙にどこまで通用するか」と目を輝かせていた。

高温に耐えろ

 両機を製作したのは、ハイユーザー向けの模型メーカー「バンダイスピリッツ」を中心にしたプロジェクトチーム。製作には相当な困難と工夫があった。

 その一つが素材。宇宙では、太陽光が当たる面では100度ほどまで温度が上昇すると想定され、プラモデルに使われるプラスチックでは変形してしまうという。

 そのためプロジェクトチームは高温に耐えられるよう、「ハイテンプ」と呼ばれる樹脂をメインに使用した。陶器のように焼きを入れることで耐性が増す樹脂で、この樹脂ならば高温は240度、低温ではマイナス50度程度まで対応できるという。

photo 宇宙飛行士、野口聡一さん(左)が手にしているのが高熱に耐えられる樹脂「ハイテンプ」で造形したもの=4日、静岡市葵区(石原颯撮影)

 ただ、製作は一筋縄ではいかなかった。3Dプリンターで造形後に樹脂を製造するメーカーの推奨通りに焼きを入れたところ、精密な造りゆえに割れてしまったり、ヒビが入ってしまったりしたという。複数回に分けて段階的に熱を入れる方法などを試し、最適な製作手順を見つけた。

赤くないシャアザク?

 塗装の色落ちも問題となった。大気圏外は紫外線(UV)が厳しいため、最初の試作機は、通常の塗装の上からUVに耐えられるコーティング剤を上塗りした。しかし、半年分のUVを短時間で照射する試験で色が変色。さらに宇宙空間では、このコーティングでは色が真っ白になってしまうことも判明した。

 赤くないシャアザクはシャアザクではなく、トリコロールカラーでないガンダムはガンダムではない。そこで、東京大の教授から宇宙用のコーティング剤を紹介してもらい、変色しないように改良を加えた。

 こうしてできあがった模型をさらにテスト。真空状態でも目のLEDが機能するか、打ち上げの過程で発生する激しい振動に耐えられるか、といった課題をクリアし、ほぼ完成にこぎ着けた。

photo ほぼ完成した宇宙仕様の“ガンプラ”=4日、静岡市葵区(石原颯撮影)

 今秋中にJAXAへ納品する予定となっており、現在、LEDの色を地上から操作するためのプログラムなどの最終調整を行っているという。

五輪を応援へ

 “ガンプラ”を宇宙へ上げる計画は日本を代表するクリエーター・イノベーターが東京五輪・パラリンピックへの思いを発信する「ONE TEAM PROJECT」の一つ。

 JAXAや東京大学中須賀・船瀬研究室と日本のアニメーション文化を代表する作品であるガンダムが協力して、宇宙から東京五輪・パラの選手らを応援する。

 完成した両機は中須賀・船瀬研究室が開発した超小型衛星「G−SATELLITE」に搭載され、宇宙空間まで運ばれる。地球周回軌道に乗ったところで宇宙空間に放出されるという。

 大会組織委によると、詳細は決まっていないが、両機は五輪が始まる前には宇宙空間に姿を現し、パラリンピックが終わる頃まで周遊する。足元には選手への応援メッセージなどを標示する電光掲示板を設置し、その様子を衛星に装着したカメラで撮影して地上に送るという。

 開発を担当したバンダイスピリッツの山中信弘さんは「ガンダムは宇宙にあるべきもの。宇宙に100%はないと聞くが、無事成功できるようにがんばります」と意気込んだ。

 静岡の、日本のものづくりの威信を懸けた挑戦から目が離せない。

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