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» 2019年10月10日 10時00分 公開

「auカブコム証券」として新たなスタート:ネット証券の“総合病院化”へ カブドットコム証券が見据える金融体験の未来

先進的なデジタル戦略によって、多様な投資体験を提供してきたカブドットコム証券。さらなる成長を目指して取り組むのが、新たな顧客体験による顧客層の拡大だ。幅広い層の人たちに快適で活発な金融体験を提供するべく、SalesforceのCRMを導入した同社の“変革”について、齋藤正勝社長に聞いた。

[PR/ITmedia]
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 先進的なデジタル戦略によって、多様な投資体験を提供してきたカブドットコム証券。証券業界の激しい競争の中で生き残ってきた同社が、さらなる成長を目指して取り組んでいるのが、“新たな顧客体験”による顧客層の拡大だ。

 約110万の証券口座にひもづくユーザーはもとより、投資になじみのなかった人たちにも、快適で活発な金融体験を提供する――。そのために同社が2019年に導入したのが、SalesforceのCRM(顧客関係管理)だ。

 Salesforceを選んだ決め手は何だったのか。そして、KDDIの出資を受け、19年の冬に「auカブコム証券」として新たなスタートを切る同社は、どのように変革しようとしているのか。カブドットコム証券の齋藤正勝社長と、セールスフォース・ドットコムでエンタープライズ金融営業本部長を務める田村英則氏に聞いた。

カブドットコム証券の齋藤正勝社長(左)と、セールスフォース・ドットコム エンタープライズ金融営業本部長の田村英則氏

広がりきれていない、証券取引の裾野

――昨今のネット証券業界に起きている変化をどのように捉えていますか。

齋藤: 私はカブドットコム証券の前身となる日本オンライン証券会社の設立に伴い、1999年に入社しました。それから20年がたったわけですが、当時と比べると、テクノロジー、そして法整備の面で大きな変化が起きています。

 20年前を振り返ると、インターネットといえば、基本的にはWindows95のブラウザ上だけで触れられるものでしたよね。しかも、電話回線による通信の料金は高額でしたから、一般の人にとってインターネットは身近なものとは言えなかった。それがいまやスマホが当たり前のものとなり、5G(第5世代移動通信システム)がスタートしようとしているわけですから、隔世の感があります。

 証券業界を取り巻く法規制も大きく変わりました。金融ビッグバンとして99年に実施された株の手数料自由化を受けて価格競争が起こり、創業当時と比べると手数料は20分の1程度に下がっています。取り扱う金融商品がかなり増えたことと、ネット証券への認知が世の中に浸透したことも変化といえるでしょう。

――創業当時と比べると、お客さまのタイプも変わっているのでしょうか。

「顧客体験には課題を感じていた」と話すカブドットコム証券の齋藤社長

齋藤: 金融庁は長年にわたって「貯蓄から投資へ」というスローガンを打ち出し、2016年からは「貯蓄から資産形成へ」と言葉を変えてアピールを続けています。しかし、残念ながら証券取引の裾野は十分に広がっていないのが現状です。

 これまで、当社を含むネット証券企業は、機関投資家と一般投資家との間にあった情報や手数料などの格差をなくすべく取り組み、参入障壁をなくすために努力をしてきました。それでも、「投資は限られた人だけが行うもの」というイメージは払拭(ふっしょく)しきれていません。

 ただ、近年はiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった証券取引のハードルを下げる制度が始まり、国としても資産形成を応援しているわけですから、追い風が吹いていることは間違いありません。申し上げた通り、テクノロジー面も進化しているため、あとはわれわれ自身が変わるべきと考えています。

――SalesforceのCRMを導入するにあたって、背景にあった課題は何だったのでしょうか。

齋藤: 個人投資家がプロと互角で戦えるような環境を提供するという面では、ある程度達成できたと思いますが、顧客体験に関しては、いくつかの課題を感じていました。

 例えば、取引の際に使うWebサイトやスマホ画面は、慣れていない人にとっては使い勝手がいいとは言えず、改善の余地が少なくありません。ネットバンクの場合、ATMというデファクトがあるため、そこに合わせればある程度使いやすくなるものですが、ネット証券ではそうしたデファクトがないため設計が難しいのです。

 また、現場レベルでは、お客さまの情報が複数のシステムに分散していたり、お客さまの状況に合わせたマーケティングができていなかったりといった問題もありました。当社では、CRMを自社でこだわって開発していたのですが、お客さまや扱う商品の数が増えるに従って、対応が難しくなっていたのです。これらの点については、18年から19年にかけてSalesforceのService CloudとMarketing Cloudを導入して、改善に取り組んでいます。

自社システムとSalesforceを“ハイブリッド”に運用

――数あるベンダーの中からSalesforceを選んだ最大のポイントを教えてください。

齋藤: 先ほど申し上げた現場レベルの課題を解決できるという期待はもちろんありましたが、私が個人的に意識した最大のポイントは他にありました。それは、クラウドサービスであるSalesforceのCRMを使えば、グループ企業間の連携による可能性を広げられるという点です。

 カブドットコム証券は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) であり、19年の冬にはKDDIグループともJVを立ち上げることになりました。これらのグループ企業にはSalesforceを導入している企業が少なくないため、Salesforceを介した連携を取りやすいのです。

――なぜ、連携が必要なのですか?

齋藤: 今は、1つの企業だけで物事を考える時代ではありません。コングロマリット的に、複数の企業をまたいでサービスを提供することが当たり前になりつつあります。つまり、プラットフォームとして仕組みを構築することの重要性が高まっているのです。

 ただ、私たちは昨今の世の中の変化を受けてプラットフォームとなることを意識したのではなく、実は創業当初から、そのような展望を抱いていました。われながら感動を覚えるのですが、20年前に当社を設立する際にまとめた企画書を見ると、プラットフォーマー志向がはっきりと打ち出されていたんです。当時はまだSaaSといった言葉もありませんでしたが、“BtoBtoC”を見据えたビジネスを作ろうとしていました。

 実際、当社では12年から株式や先物、オプション取引に対応したAPIとして「kabu.com API」を公開しました。従来は、新規参入で証券取引に関するサービスを提供するには、高いコストをかけて大手証券会社のツールを使用しなくてはならなかったのですが、APIを使えば、そのような問題を解決することができます。こうした取り組みは、証券取引という極めて限られたカテゴリーのプラットフォーマーを狙ってのことなのです。そして、プラットフォーマーになることは、個人投資の裾野を広げることにもつながると考えています。

「“つなぐ”ことがこれからは大切」と語る田村氏

田村: 今から3年ほど前、セールスフォース・ドットコムの米国本社に行くと「CONNECT」という言葉が頻繁に使われていました。部門を超え、会社を超え、お客さままでを“つなぐ”ことが、これからのビジネスにおいて大切なことである、と。

 金融業界では、セキュリティへの意識もあり、会社を超えた連携が他業種と比べると遅れている状況です。しかし、齋藤社長がいち早く取り組まれていたということを知り、本当に素晴らしいと感じます。

現場力として最も大切な「仮説検証力」を育てる

――Salesforceの導入後、どのような変化を感じていますか。

齋藤: お客さま情報の集約化や、メールマーケティングの拡充など、いくつか取り組みを始めたものはありますが、導入したばかりですから、まだ変化のほんの入り口に踏み入れたにすぎません。お客さまに変化を感じていただくには、もう少し時間がかかるでしょう。

 今の段階で私が実感しているのは、社内に仮説検証の文化が育ってきたという点です。私はエンジニア出身ですから、仮説検証を繰り返すことこそが現場力として最も大切なことと考えているのですが、Salesforceの導入によって、結果にこだわる姿勢が見えてきましたね。

田村: Salesforceはクラウドのシステムですから、仮説検証をしやすいという特徴があります。昔は、システムを導入するには、詳細な要件を、時間をかけて整理して、開発を進めることが一般的でしたよね。ですから、システムを稼働させるまでに膨大なコストが掛かり、いったん導入するとなかなか変えられないという状況でした。

 一方で、Salesforceの場合、思い付いたことをすぐに試して、だめなら他の方法に簡単にスイッチすることができます。最悪、試した全ての方法がだめなら、リセットすることもできますから、積極的に仮説検証を進めることができるのです。現代のビジネスに求められているのは、小さな失敗を重ねながら自らの道を見つけていくことですから、Salesforceはそういった意味においてもお役に立てると思いますね。

――カブドットコム証券では、システムを自社開発されていたとのことですが、クラウドにシフトしたことで、仮説検証をしやすくなったのですね。

齋藤: そうです。ただ、カブドットコム証券のあらゆる業務システムにSalesforceを導入したわけではありません。というのも、先物や為替などの取引を扱う場合、処理スピードが非常に重要になるため、クラウドにシフトさせることが難しいのです。処理に1秒かかればシステム障害、という世界なので、常に高速処理を担保するために、自社システムにも引き続き力を入れていきます。

 その一方で、ERPやCRMといった情報システムについては、クラウドにスイッチするメリットが大きく、申し上げた通り、業務効率化やお客さま接点の充実に加え、グループ会社との連携といった側面から、クラウドにシフトすることが合理的と考えました。

田村: クラウドがマッチする領域と、そうではない領域を分けて、システムをハイブリッドに考えられていることに、齋藤社長の先進性を感じます。このような考え方が広がれば、金融業界において今後、クラウドの導入がますます進んでいくでしょう。

グループに横串を通し、お客さまを幅広くサポート

――証券業界のプラットフォーマーとしての今後の展望を教えてください。

齋藤: 私の構想の中では、お客さまのお困りごとに対してグループでトータルにサポートできる仕組みを構築したいと考えています。病院に例えると、外科や内科といった特定の領域を扱う病院もあれば、そうした領域を横断する総合病院もありますよね。私たちのグループには、さまざまな会社がありますから、連携を高めることによって総合病院としての役割を担うことができると考えています。

 そのためには顧客情報を共有したり、業務プロセスをつないだりといった連携が必要で、グループ企業に横串を刺せるSalesforceが不可欠です。具体的には、当社とじぶん銀行、あるいは当社と三菱UFJ信託銀行で連携するだけでも、実施する価値はあるでしょう。

 現状は、住所変更の手続き一つにしても、同じグループ内の会社であっても、それぞれのWebサイトで個別に手続きをしなくてはなりません。こうした縦割りをなくし、1回で手続きを終えられるような仕組みを作ることができると考えています。

田村: プラットフォーマーとは、まさにそういう役割ですよね。役所でも郵便局でも、住所変更のときの手続きは手間がかかるので、そうした連携は社会的にも大いに求められていると思います。

齋藤: はい。SalesforceのService Cloudを使えば、技術的には可能ですよね。そもそも銀行では対面で厳しく本人確認をしているわけですから、その信頼性の高い情報をService Cloudで連携させればいい。クラウドを活用すれば、そういったアイデアが浮かんできますね。

将来のコミュニティーづくり、データ運用を見据えて

――顧客接点においては今後さらにどのような展開を考えていらっしゃいますか?

齋藤: お客さまの裾野を広げるには、熱狂的なファンをコツコツ増やすことが大切です。そのために、顧客とのコミュニティーを構築できるCommunity Cloudを活用した情報発信も進めていきたいと考えています。

 最近は、ネット証券企業が、フィナンシャルアドバイザーによる対面アドバイスを提供する動きが活発になっていますが、まだお客さまがアドバイザーを選ぶような仕組みにはなっていません。今や、お医者さんでさえ、インターネットの口コミで選ばれる時代になっているわけですから、お客さまが自らアドバイザーを選べる仕組みが必要です。

田村: そうですね。お客さまに選ばれるためには、第三者的な視点からのレビューがまずは大切で、さらには友人の評価も判断に影響します。Salesforce Community Cloudを活用すれば、そうした評価を可視化するなど、それぞれのビジネスニーズに適したサービスを作り込むことができますから、ぜひご活用いただければと思います。

――19年の冬にカブドットコム証券はauカブコム証券に名称変更することが予定されています。最後に、auカブコム証券としての新たな可能性について、お聞かせください。

齋藤: われわれの持つデータとKDDIグループが持つデータは、それぞれに特徴がありますから、両者を連携させることで、新たなサービスを生み出すことができるでしょう。

 よく、「データは資産」といわれますが、私は資産であるからには“運用”するべきと考えています。単にデータを分析して個別のサービスに活用するだけでは不十分で、より広く価値を生み出していく視点を持つべきでしょう。私たちがグループ全体としてデータを運用すれば、日本だけではなく、海外のマーケットをも取り込めるポテンシャルがあります。そういった意味でも、今後もSalesforceを活用して、よりグループの連携を深めていきたいと思いますね。

田村: 私は、「Salesforceを使って良かった」と導入企業の皆さまに実感していただくことに喜びを感じています。ですから、導入していただいたことをスタートと捉え、さらに継続的に関わって、成長をお手伝いしていきたい。カブドットコム証券様とわれわれが一緒になって、社会に貢献できるサービスを生み出していきたいと思います。

齋藤: セールスフォース・ドットコムは、私にとって常に新しいインスピレーションをもたらしてくれる存在です。次のプロダクトを楽しみにしていますし、今後のさらなる成長に期待しています。

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提供:株式会社セールスフォース・ドットコム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2019年11月9日

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