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» 2019年11月12日 18時36分 公開

【ビジネス解読】消費税増税で際立つ国の税収増 閉じる「ワニの口」

 10月1日に消費税の税率が10%に引き上げられる中、国の税収の好調ぶりが際立っている。財務省によると、消費税増税を受けた令和元年度の税収は前年度に続き過去最高を更新する見込み。慢性的な財政赤字の大きさが少しずつ縮小してきているともみられる。ただし、税収の着実な増加は国民負担の重みが増していることの裏返しでもある。働く世代の間では社会保障のために払う費用の上積みなどもあって負担感はさらに大きくなっており、国の税収増を喜んでばかりもいられなさそうだ。

[産経新聞]
産経新聞

 10月1日に消費税の税率が10%に引き上げられる中、国の税収の好調ぶりが際立っている。財務省によると、消費税増税を受けた令和元年度の税収は前年度に続き過去最高を更新する見込み。慢性的な財政赤字の大きさが少しずつ縮小してきているともみられる。ただし、税収の着実な増加は国民負担の重みが増していることの裏返しでもある。働く世代の間では社会保障のために払う費用の上積みなどもあって負担感はさらに大きくなっており、国の税収増を喜んでばかりもいられなさそうだ。

photo 消費税増税が実施され、大阪府内のコンビニエンスストアでは惣菜などの「持ち帰り」と「イートインスペース利用」で消費税の適用税率が変わることを知らせる張り紙が出ていた=10月1日午前、大阪府吹田市(渡辺恭晃撮影)

 「ワニの口が徐々に閉じてきている」

 クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストはリーマン・ショック後の税収の推移についてこう分析している。

 ワニの口とは財政赤字の拡大傾向が続いてきたことの例えだ。国の一般会計での支出と税収の推移を折れ線グラフで示した場合、支出が税収を上回り続け、あたかもワニがパックリと口を開けたような形になる。ところがこのところ下アゴにあたる税収のグラフが上向き、横ばい傾向にある支出のグラフとの差が縮まってきている。

 財務省によると、平成30年度の税収は2年度以来28年ぶりに過去最高を更新。消費税増税の効果が加わる令和元年度の税収は記録をさらに塗り替え、約62兆5000億円に達する見込みだ。

 税収の増加は最近だけの傾向ではない。税収の直近の底はリーマン・ショック直後の平成21年度(約38兆7000億円)で、その後はほぼ一貫して上昇。令和元年度までの10年で約1.6倍に膨らむ計算だ。

 ここまで税収が増え続けてきた要因は消費税率引き上げと所得税の伸びにある。

 平成26年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、消費税による税収はそれまでの10兆円程度から17兆円程度に大幅アップした。またリーマン・ショック後の堅調な企業業績の回復や人手不足を背景に、働き手が多くなってきたことが所得税収の増加をもたらした。さらに株価上昇で運用利益が生じやすくなっていることも所得税の増加につながっているとみられている。

 今回の消費税増税を受けて、消費税による税収はまもなく所得税による税収を上回るとみられる。森田氏は「国際的な水準からみれば日本は税収全体に占める消費税の割合は小さい」と指摘。消費税による税収は景気変動に左右されにくく、今後も継続的に増えていく社会保障費を賄うのに適しているという特徴があるとして、「消費税増税は避けられない選択だった」とみている。

 一方、納税者の視点に立てば、国の税収が増えることを喜んでばかりもいられない。

 個人や企業など国民全体の所得の規模を示す国民所得に対する一般会計税収の比率は令和元年度で約15%の見通し。これに地方税と社会保障負担も考慮した国民負担率は約43%にもなる。国民負担率は平成に入ってから30%台後半で推移してきたが、消費税増税があった26年度を境に40%台前半で推移するようになった。

 日本の国民負担率は、50%を超える国も多い欧州の水準と比べると決して高いわけではない。ただ、少子高齢化で公的年金の財政健全性が損なわれることや、医療費の増加を背景とした医療保険の危機などが指摘されるなか、負担だけが増えていけば国民の不安が高まることは確実だ。

 大和総研は昨年秋のリポートで、平成23年から令和2年にかけての10年間で、4人家族で年収1000万円の共働き世帯の可処分所得は45万円以上減ることになると試算した。このうち今回の消費税率引き上げによる可処分所得の押し下げ効果は7万5700円。このほかにも子供手当ての支給額の減少や厚生年金保険料の引き上げなど、消費者生活に影響を与える施策が行われてきたことが影響したという。

 リーマン・ショック後、企業業績はおおむね好調だったが、このところは米中貿易摩擦などの不安材料が積み重なっている。国際通貨基金(IMF)は10月の世界経済見通しで「世界経済の活動のペースは引き続き弱い」と分析しており、今後、日本企業の業績や賃金が弱含めば、国民の消費生活にかかる税や社会保障の負担が重みを増すことは間違いない。(経済本部 小雲規生)

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