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» 2019年11月25日 12時17分 公開

【経済インサイド】かんぽ生命、販売減でも増益 企業決算「上方修正」の不思議

 保険商品の不適切販売問題を受け、営業を自粛しているはずのかんぽ生命保険が、令和2年3月期の連結最終利益予想を従来の930億円から1340億円に上方修正した。新規の契約件数は当然、大幅に減少する見込みだが、逆に利益が予想より増える不思議な現象だ。どのようなカラクリがあるのだろうか−。

[産経新聞]
産経新聞

 保険商品の不適切販売問題を受け、営業を自粛しているはずのかんぽ生命保険が、令和2年3月期の連結最終利益予想を従来の930億円から1340億円に上方修正した。新規の契約件数は当然、大幅に減少する見込みだが、逆に利益が予想より増える不思議な現象だ。どのようなカラクリがあるのだろうか−。

 「販売自粛後に限れば、契約数は前年の1割程度とみてもらっていい」。11月14日に開催された元年9月中間決算会見で、かんぽ生命の掘金正章副社長は自粛による打撃の大きさを明かした。

 かんぽ生命では不適切問題発覚後、顧客への対応に注力するため、7月中旬から販売を受託する郵便局などで積極的な販売を自粛。これを受け、4〜9月期の個人保険の新規契約数は58万件と、前年同期の88万件から34.4%も減少した。

 それにも関わらず、9月中間期の最終利益は11.0%増の763億円。不利益を与えた顧客への保険金返還などの費用に約10億円、問題の実態調査などに35億円を計上した上での数字だ。

業界特有の事情

 「販売減で増益」という不可解な決算を読み解くと、保険独特の「ストック型」の収益構造と、「L字型」のコスト構造という2つのキーワードが浮かび上がる。

 保険は新たに獲得した契約だけでなく、保有する契約から保険料を得るストック型ビジネスだ。かんぽ生命には9月末で約2800万件もの保有契約があり、ここから1年間で得られる保険料収入は約4兆5000億円にのぼる。4〜9月期でみると、新規契約は前年同期から約30万件減少し、保険料収入に換算すると約500億円ほど減ったが、減少幅は全体の収入の1%程度にすぎない。

 一方、コスト構造も特有だ。契約ごとに販売委託先の日本郵便に支払う手数料は最初の1年(12カ月間)が手厚く、2年目(13カ月目)以降は一気に下がる。その差は「1年目は2年目以降の数倍」(関係者)というほどの極端なL字型の体系だ。ほかにも1年目に限っては保険加入の審査や保険証書発行などの事務費用もかかる。かたや、契約者から月々支払われる保険料はずっと一定の金額だ。

 このため、かんぽ生命にとっては、契約獲得の際の初年度は手数料や経費がその保険から得られる収入を上回る“持ち出し”となり、2年目以降に収益が出る構造となっている。これが新規契約が激減しても、それ以上に経費が大幅に減少して逆に利益が出た理由だ。

 だが、堀金氏は「これが続けば、長期的には経営全体への影響が出る」と危機感を強める。新規契約の減少は即座に業績に影響がないとはいえ、保有契約自体が目減りすると、保険料収入の減少に直結する。

 実際、かんぽ生命は民営化後から現在までに保有契約が半減するなど右肩下がり。信頼失墜による顧客離れで解約が増え、保有契約の減少に拍車がかかれば、経営は立ちゆかなくなる。

販売再開目指すも暗雲

 今後の焦点は、販売が落ち込んだままの状況がどこまで続くかだ。日本郵政グループは、不利益の疑いのある保険契約(約18万3000件)の実態調査を進めており、調査報告を年内にまとめる。さらに、年内には弁護士で構成する特別委員会の調査報告や、9月から立ち入り検査を行っている金融庁の行政処分もある見通し。これを区切りに、年明けからの保険販売を再開したい考えだ。

 しかし、ここにきて雲行きがあやしくなっている。11月19日の衆院総務委員会で、かんぽ生命の植平光彦社長は、実態調査が年内に終わるかを問われ、「意向確認の数を年末に向けて最大限増やしたい」と述べるにとどめた。

 もともと、年内に予定するのは最終報告だったはずだが、9月末に契約時の状況などを顧客に確認できたのは全体の4割。顧客対応の体制を増強して取り組んではいるが、件数が膨大なこともあり「なかなか面会できなかったりしており、苦戦している」(関係者)。残り6割について顧客の意向を確認する調査を終えられない可能性も出てきた。

 仮に調査を終えられなかった場合、日本郵政グループは販売自粛解除にどのような判断を下すのか。途中段階の調査を踏まえた原因究明や再発防止策のままでは、顧客や従業員の不安が解消されない。それを区切りとして販売を再開するのは、「見切り発車」との批判が再び強まりかねない。

 11月の決算会見では、販売が減少しても業績に即座に影響しないことを踏まえ、記者から「改善策を徹底できるようになるまで、自粛を続けるべきではないか」との指摘もあった。これに対し、日本郵政の市倉昇専務執行役員は「慎重に顧客本位の活動をしたい」と言葉を濁した。

 日本郵政の長門正貢社長は、9月末の会見で「一人残らず、最後の1円まで不利益を戻す」との顧客対応方針を打ち出した。実態調査の進展が芳しくない中で、販売再開をめぐるジレンマに再び悩まされそうだ。(経済本部 万福博之)

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