――日本人研究者の新型コロナに関する論文数が欧米に比べて少ないという指摘もあります。論文発表の面でも日本が立ち遅れているのはどこに原因があると思いますか。
研究者が働いている大学や病院は、研究インフラが壊れています。つまり、人材を養成したり再教育したりすることが行われていない。1人の医師が日中は患者を診ながら、検査もし、書類の提出などの雑用もこなし、夜中に論文を書くということで、研究に専念できる環境になっていないのです。日本の研究者はチームワークが良くて、予算規模は少なくても成果を出していると言われたりもします。ですが、それは虚構です。チームワークといっても、昭和の時代の根性論が年配の研究者に残っていて、若手研究者や学生にはブラックラボといわれ敬遠される時代になっているのです。
ワクチンは公衆衛生の要だと思っていますが、開発に成功してお金や権力を得ようと考えるのではなく、初心に返って皆のため、世界の人々のためと思って活動してほしいですね。そのために次はどういう行動が必要か想像できる若い人たちに期待したいと思います。その意味で、これから半年の間、日本人は日本人、いや世界の幸せのためにどう行動すればよいのか。ワクチンはそれを考えるにふさわしい社会問題の題材になると思います。
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