先日、国土交通省が発表した東京都内の2021年の公示地価(1月1日時点)は、各用途とも8年ぶりに前年比で下落に転じていた。全用途の全国平均でも前年比0.5%のマイナスだった。
新型コロナの感染拡大によるテレワークの普及や外出の自粛、インバウンドの消滅などによって、商業施設の売り上げが激減するとともにオフィス需要が大幅に減退した影響だと考えられる。
ところが、東京のマンション価格は下がっていない。東京カンテイが公表した21年2月の東京23区における中古マンションの平均価格は、プラス0.5%の6071万円で8カ月連続の上昇。首都圏でも前月比プラス0.8%の3892万円で6カ月連続の上昇となった。
土地の価格は全国規模で下がっているのに、東京とその近辺の中古価格は上がっているのだ。
デベロッパーの用地仕入れ担当者たちに取材してみると、彼らも一様に「土地の値段は上がっている」と言う。ということは、これから売り出される新築マンションの価格は以前よりも高くなる。
実際のところ、東京の都心エリアはその値上がりした価格でも売買が成立している。つまり、市場価格は上がっている。
これはいかにも不思議なことだ。新型コロナによってGDPは減速し、人々の所得は減少。企業業績も全体としては悪化しているというのに。
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