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» 2021年05月14日 10時39分 公開

存在感高まる政府系金融機関 コロナで不振企業の駆け込み寺

 コロナ禍を背景に、政府系金融機関の存在感が高まっている。リーマン・ショックのときもそうであった。融資先の追加与信に二の足を踏む民間金融機関に代わって、急場の資金繰りを支えたのは、「国の政策を受け、一時的に経済合理性を離れて投融資できる」政府系金融機関であった。日本政策投資銀行(政投銀)はその筆頭に挙げられる。

[SankeiBiz]
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 コロナ禍を背景に、政府系金融機関の存在感が高まっている。リーマン・ショックのときもそうであった。融資先の追加与信に二の足を踏む民間金融機関に代わって、急場の資金繰りを支えたのは、「国の政策を受け、一時的に経済合理性を離れて投融資できる」政府系金融機関であった。日本政策投資銀行(政投銀)はその筆頭に挙げられる。

日本政策投資銀行Webページ

 政投銀は政府の意向を受けて3月29日からコロナ禍で特に深刻な影響を受けている資本金10億円以上の飲食・宿泊などの事業者向け金融支援策を開始した。「劣後ローン」の供与はその中心となる施策で、金利は当初の3年間、民間金融機関よりも低い年1%に設定し、4年目以降も最大年3%に抑える。民間金融機関が提供する劣後ローンは通常年4〜5%の金利であることから、まさに破格な大盤振る舞いだ。

 だが、「政投銀に飲食・宿泊事業の審査ノウハウがあるとは思えない。不良債権化が心配だ」(政投銀OB)との声も聞かれる。政投銀は、居酒屋大手のワタミに対して劣後ローンなど100億円規模の資金供与を決めた。劣後ローンは通常のローンよりも返済順位が低く、企業の資本を補う効果がある。半面、銀行にとっては相対的に高い金利収入は得られるものの、リスクの高い融資となる。政投銀はワタミの実質的なメインバンクになったようなものだ。

 さらに、この支援策に合わせて、政投銀は基本とされてきた「民間金融機関との協調融資原則」の適用を停止した。政投銀は民間の金融機関が敬遠するリスクの高い案件についても単独で融資できるようになったわけだ。飲食・宿泊などの甚大な影響を受ける事業者への融資には従来の「民業圧迫回避」の原則を棚上げして、政投銀単独で資金を流し込むことが可能となる。

 また、政投銀は3月末に飲食・宿泊業向けの支援ファンドを立ち上げ、中堅・大企業が発行する優先株を引き受ける。優先株は議決権がない代わりに配当が高い株式だ。企業にとって調達コストは高いが、経営の自由度は保たれる。

 その第1号となるとみられているのが、新型コロナウイルス感染拡大を受け旅行需要が低迷、2021年3月期の連結経常損益が過去最大の1000億円規模の赤字になる見通しのJTBだ。

 同社は政投銀に対し優先株の引き受けを軸とした資本支援を要請している。JTBは6500人の社員削減など大規模リストラ策、さらに資本金を1億円まで減資し、中小企業化する、身を切る覚悟を決めた。

 日産自動車や三菱自動車への危機対応融資、上場が延期されているキオクシアホールディングス(HD)への投融資、ANAHDへの劣後ローン供与、近鉄グループHDや丸井グループへの融資、ロイヤルHDの優先株引き受けなど、政投銀は経営不振にあえぐ中堅・大企業のまさに駆け込み寺となっている。

 既に政投銀のコロナ関連融資は20年4〜9月で約2兆円に達し、リーマン・ショック直後の半年実績(1.4兆円)を上回っている。さらに政投銀は、「1月に従来の縦割りで分けた営業部隊とは別に業種を跨いで提案する渡辺一社長直轄の新組織を立ち上げ、企業の相談に幅広く対応している」(関係者)という。政投銀のコロナ関連投融資は一層拡大していくだろう。

 森岡英樹(もりおか・ひでき) ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。


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