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» 2021年06月10日 08時18分 公開

飲食サービス業が招く空洞化 雇用消え日本経済は「下方屈折」

 東京都などへの緊急事態宣言が20日まで延長され、4〜6月期の国内総生産(GDP)が2期連続のマイナス成長になる可能性が高まってきた。問題は飲食業を中心にした対面型サービス企業が持ちこたえることができず、この分野の雇用が「空洞化」する危険性が出てきたことだ。

[SankeiBiz]
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 東京都などへの緊急事態宣言が20日まで延長され、4〜6月期の国内総生産(GDP)が2期連続のマイナス成長になる可能性が高まってきた。問題は飲食業を中心にした対面型サービス企業が持ちこたえることができず、この分野の雇用が「空洞化」する危険性が出てきたことだ。

長引くコロナ禍で飲食産業の雇用が空洞化する可能性

 仮にワクチン接種の進展で客が戻ってきても、簡単に売上高が元通りにならないかもしれない。政府が緊急事態宣言の延長を決めたことに伴い、民間調査機関の中で4〜6月期のGDP見通しを当初のプラス成長からマイナス成長に下方修正するところが続出している。

 2期連続のマイナス成長は、欧米の経済専門家からは「景気後退」とみなされ、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)や財務相・中央銀行総裁会議では「日本経済は大丈夫なのか」と心配される立場になってしまった。

 景気回復の遅れが、ワクチン接種の進展でいずれ取り戻せるなら、あまり心配しなくていいかもしれない。しかし、日本経済の現実はさらに厳しいと筆者の目には映る。昨年4月の1回目の緊急事態宣言から1年以上が経過し、飲食店の経営者の中には預貯金が底をつき、廃業を余儀なくされるケースが目立ってきた。

 東京商工リサーチによると、2020年度の居酒屋(含むビアホール)の倒産件数(負債1000万円以上)は175件と、01年度以降で最高を記録した。都道府県から飲食店などに支給される「協力金」が「遅配」となっていることも、零細経営の飲食店を直撃している。昨年1回目の時短要請に応じた協力金が今年になって振り込まれたものの、2回目以降の協力金は振り込まれていないケースも多数に上っているもようだ。

 自治体のチェックに時間がかかっているのは「正確」「厳正」を優先した結果だが、入金の遅延で倒産に至れば、制度の目的を達成したことにはならないだろう。

 ワクチン接種の進展を受けてマーケットの中には楽観論が存在するが、それは供給サイドが無傷であることが前提であり、客が戻れば売り上げも戻るというシナリオだ。しかし、現状のように有効な財政的サポートもなく、明確な期限も示さずに時短要請を飲食サービス業に続ければ、空洞化の現実は、だれの目にも明らかになってくるだろう。

 経済産業省の調査では、飲食サービス業は400万人から500万人の雇用を生み出している。このまま飲食サービス業の落ち込みを「放置」同然にすれば、廃業が急増して大規模な空洞化を招く事態に結びつきかねない。

 実際、東京都内の主要ターミナルそばのビルに入居するテナントの退去が目立ち始めたのは、その兆候といえるだろう。空洞化が一定程度を超えて進めば、景気循環論では想定できなかった日本経済の下方屈折が起きかねない。

 今のところ、米中の景気回復が急ピッチで進み、旺盛な外需に支えられ、それが安全網代わりに作用している。しかし、対面型サービスの空洞化を放置していては、日本経済の活力は失われるだろう。短期的な対策と中長期の成長政策を組み合わせた経済の再活性化策が、喫緊の課題であると主張したい。

 田巻一彦(たまき・かずひこ) ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。


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