ただ、ちょっと気になることがある。リサーチ事業などを手掛けるアイブリッジが行った調査によると、普段使用している文具に興味やこだわりがあるのは、若い人ほど多いことが明らかに。子どもの数が減っていることを考えると、文具業界に「逆風」が吹き荒れているのではないだろうか。
矢野経済研究所のデータを見ると、やはり右肩下がり。2016年度の市場は4692億円に対し、20年度は4064億円(予測)。クレヨンやクーピーなど子ども用をメインに扱っているサクラクレパスも、じわじわダメージを受けているのではないか。今年100歳を迎えたけれど、このままだと108歳を祝う茶寿(ちゃじゅ)は難し……と邪推していたが、見事に違っていたのだ。
20年度の売り上げは386億円で、8年連続で過去最高を更新。「少子化+子ども向け商品=ダメだこりゃ」といった公式を想像していたものの、海外事業が会社の業績を引っ張っていたのだ。売上高の海外比率をみると、12年は27%だったが、20年度は41%まで高まっている。
ところで、海外の売り上げは、なぜ伸びているのだろうか。同社が海外展開を始めたのは、1930年のこと。世界恐慌が日本にも波及し不況が深刻化していたり、サッカーのワールドカップ第1回大会(ウルグアイ)が開かれたり、銀座に三越がオープンしたり。創業してからわずか9年目にもかかわらず、海外展開を始めていたのだ。
当初、アジア諸国に、商品を販売していたわけだが、担当していたのは「営業部」でもなく「海外事業部」でもない。「美術部」だったのだ。ネーミングからして“学校の部活動”のようなイメージがあるが、学園祭のノリのような感じで仕事をしていたわけではない。現在、海外事業を担当している菅原健一常務取締役に聞いたところ、「“商品をつくって、売れたら終わり”ではなく、絵を描くことの楽しさなどを伝えていくことにチカラを入れていました。こうした背景があったので、部署名は『美術部』としていました」
その後、1956年に米国、その2年後に欧州に進出する。「海外に進出する際、日本で展開しているブランドをそのまま使っても、現地の人たちにはなかなか伝わりません。ということもあって、パッケージのデザインや商品名などは変えています」(菅原さん)とのこと。
例えば、水彩絵の具には「Koi(コイ)」という名称を付けている(日本では「プチカラー」として販売)。パッケージにカラフルなコイ(鯉)を描くことで、日本的なイメージを表現しているという。このほかにも、日本で販売しているボールサインは「ジェリーロール」に、水性顔料サインペンは「ピグマ」といった名称で、それぞれ販売している。
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