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» 2021年08月05日 10時12分 公開

創業以来初の「うなぎパイ」生産休止にもめげず、春華堂がコロナでつかんだ“良縁”地域経済の底力(1/5 ページ)

「夜のお菓子」で知られる静岡のお土産品、春華堂の「うなぎパイ」が新型コロナウイルスの影響をまともに受け、一時は生産休止に追い込まれた。そこからの立て直しを図る中で、新たな付き合いも生まれたと山崎貴裕社長は語る。その取り組みを追った。

[伏見学,ITmedia]

 67%減、過去最大の減少幅――。JR東海が発表した2020年度決算に衝撃が走った。新型コロナウイルスによって東海道新幹線の年間利用者数は前年度から7割近くも減り、最終赤字は2015億円に上った。

 長らく日本の経済成長を下支えしてきた東海道新幹線がもがき苦しんでいる。その余波をもろに受けたのが沿線各地のお土産品だ。

 「雇用調整助成金に助けられた。あれがなかったらやばかったかもしれない」と、 静岡県浜松市に本社を構える春華堂の山崎貴裕社長は絞り出すような声でつぶやいた。

 同社の看板商品「うなぎパイ」は、静岡の銘菓として押しも押されもせぬトップ人気を誇る。年間生産数は約8000万本。実に春華堂の売上高の8割以上がうなぎパイによるものだ。しかし、コロナは人の移動とともに、うなぎパイの売り上げをそっくりそのまま奪い去った。

静岡を代表するお土産品「うなぎパイ」(写真:筆者撮影)

 駅などで販売できなければ、インターネット通販があるではないかと思うだろう。実際、菓匠三全(仙台市)の「萩の月」や、赤福(三重県伊勢市)の「赤福」など、コロナ禍で各地のお土産品がネット販売に踏み切った。

 しかし、うなぎパイは通販をしないという不文律がある。理由は、商品の破損を防ぐためだ。うなぎパイは職人の手によってパイ生地が9000層も折り重ねられており、非常に割れやすい。「壊れてもいいから売ってほしい」という声がネット上などに溢(あふ)れたが、春華堂は決して掟(おきて)を破ることはなかった。

 とはいえ、売ることができない商品を今までのペースで作り続けることはできない。断腸の思いで、20年3月13日から5日間、生産拠点である「うなぎパイファクトリー」および浜北工場の操業を一時休止した。これまで停電やメンテナンスなどで数日間止めることはあったが、生産調整のために休業するのは130年以上続く同社の歴史で初めてのことだった。

 「工場を止めるのは嫌でした。ただ、そのニュースを見た人たちが応援してくれて、瞬間的に売り上げが上がりました。それがあって、前倒しで生産を再開することができたのです」と山崎社長は振り返る。

 その後、夏から始まった「Go To トラベルキャンペーン」によって静岡にも観光客が戻ってきた。比例して売り上げも回復し、最終的に20年度の業績は前年比35%減で着地した。

 「Go To トラベルのおかげで爆発的に人が動いたのと、コロナの波が2、3回落ち着いたときに少し売り上げが伸びたため、(前年の)半減よりは上振れしたのかなと思います」と山崎社長は話す。

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