「ライバルはお店の一蘭」――。そう銘打つ商品がある。一蘭が発売したカップ麺「一蘭 とんこつ」だ。2021年2月の発売から総出荷数は400万食を突破(9月2日時点)。一蘭のおみやげ商品としては最速だという。なぜこんなにも売れているのか? また、通常のラーメンについている具材が全く入っていないのは、なぜなのだろうか?
実は、一蘭カップ麺は20年以上前から開発に取り掛かっていたものの、同社として納得のいく味を作り上げることに苦心していた。一蘭らしさを残しつつ、「一蘭が今作れる最高のカップ麺」を目指して開発を続け、21年2月に完成させた。
カップ麺はお店のラーメンの模倣品ではない。麺は一蘭特製の生麺のようなもっちり感やなめらかさにこだわり、特注ノンフライ麺を使用。スープは、とんこつの重厚感や舌触りを表現する粉末タイプと、とんこつの風味やスープに馴染む液体タイプのWスープとなっている。さらに一蘭特製の「秘伝のたれ」は、麺とスープに合うようカップ麺のためだけに開発したという。
具ナシを採用した理由については「純粋にラーメン本来の味を楽しんでほしい」(広報担当)から。具材を入れなかったことで、一蘭ラーメンのストレートな「おいしさ」を再認識した消費者から支持を集めているようだ。
人気を押し上げたのはマーケティングにも秘密があった。発売前には「一蘭からアレが出ます」というメッセージをテレビCMやSNS広告、プレスリリースを通じて発信。話題化させ、消費者の期待を高めた。発売後はテレビや新聞、雑誌、YouTubeを通じて口コミが広がっていき、購買につながった。
同社は今後について「今の商品が完成形ではありません。常に味の研究を続けており、ブラッシュアップさせながら継続して販売していきます」と話す。
日本即席食品工業協会によると、20年の出荷ベースでの即席麵の総需要は19年比6.2%増の6307億1400万円、数量ベースでは6.1%増の59億7434万食と過去最高を更新したことが分かっている。出荷額ベースでは6000億円台に到達した。
「新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要が数字を押し上げた」と日本即席食品工業協会は分析しており、今後もその傾向は続くと推測される。「ライバルはお店の一蘭」と宣言するように、カップ麺が店舗の食数を超える日が来るかもしれない。
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