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» 2021年09月24日 09時42分 公開

岡田武史監督に聞くリーダー論 私利私欲でメンバーを外したことは一度もない経営者・岡田武史【後編】(3/4 ページ)

[霜田明寛,ITmedia]

腹をくくれるかどうか

――岡田さんが思うリーダーに必要なものを教えてください。

 一番大事なのは……腹をくくれるかどうかですね。チームにしても会社にしても、組織を作るときには僕はフィロソフィー(哲学・理念)を作ります。ただ、それをメンバーに伝えるときに、ある程度リーダーが腹をくくっていないと、伝わらないんですよね。口先だけだ、というのがバレてしまう。

――どんなに崇高な理念があっても、それを口にしているリーダー自身がその崇高さに値するかが問われている、ということですね。どうすれば腹の座ったリーダーになれるのでしょうか。

 とんでもない経験をすることです。豊田章一郎さんや稲盛和夫さんと話していると、やっぱり“座り”を感じるんです。この人たちは半端じゃない人生を送って、いろいろな局面をくぐり抜けてきたんだなということが伝わってくるんです。

――岡田監督にとっての“とんでもない経験”はやはり、1997年から98年にかけての最初の監督期間でしょうか。

 僕は97年のワールドカップの予選の途中、加茂周監督が更迭されたことで、いきなり日本代表の監督になりました。当時は41歳のコーチで、監督経験はありませんでした。

 当時、そんなに強い人間じゃなかったから、プレッシャーがすごくて打ち勝てると思っていませんでした。有名になるとも思っていませんから、電話帳に電話番号を載せていたので、脅迫電話や脅迫状が止まりません。家の前は24時間パトカーがいて、子どもも危険だと言われたので、妻が毎日車で送り迎えをしている……そんな状況で(マレーシアの)ジョホールバルに行って、半分気が狂いそうでした。

――ジョホールバルということは、ワールドカップの最終予選、というタイミングですね。

 「明日もし勝てなかったら、俺は日本に帰れない」と本気でそう思って、カミさんに電話してそう伝えました。でも数時間考えて、「明日、俺は急に名将にはなれない」と思ったんです。明日、俺にできることは今の力を100%出すことだけだ。それができなかったら俺の力が足りないということだからしょうがない。「国民の皆さん申し訳ございません」と謝ろうと。

 でも、絶対に俺のせいじゃない。俺を選んだ会長、あいつのせいや、と。こう思った瞬間、完全に開き直ったんです。

――先ほどおっしゃった“ブラックパワー”が岡田さんに発動した瞬間ですね。

 そうです、あれこそが“ブラックパワー”なんです。僕はあの瞬間、遺伝子にスイッチが入りました。振り返ると、あの瞬間から僕の人生が変わったんです。

 生物学者の村上和雄先生は、人間には氷河期や飢餓の時代を越えてきた強い遺伝子があるのに、こんなに安全で便利・快適な社会にいるせいで、その遺伝子のスイッチが入っていない、とおっしゃっていました。僕はあの瞬間、スイッチが入ったんです。

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