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» 2021年12月10日 08時34分 公開

岸田さん…「脱デフレ」なしに投資回復は無理だ 日本再生の意志薄弱

 デルタ株、次はオミクロン株と、変異相次ぐ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の脅威のもと、主要国は政府債務増に目もくれず財政支出拡大を続けている。

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 デルタ株、次はオミクロン株と、変異相次ぐ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の脅威のもと、主要国は政府債務増に目もくれず財政支出拡大を続けている。

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 財政出動による景気の押し上げをいち早く理論化したのは経済学巨頭、J・M・ケインズの「一般理論」である。同著には寓話(ぐうわ)を織り交ぜている。財政当局が古瓶に紙幣をいっぱい詰めて廃坑に埋め、その穴を町のごみくずで地表までふさぎ、民間企業に紙幣を再び掘り起こさせれば、実質所得が増えるというものだ。

 国内総生産(GDP)は国内の消費と投資に左右される。廃坑掘り出しは雇用を支える投資であり、取り出した現金は従事者たちに配分されて有効需要(カネの裏付けのある需要)を創出する。

 コロナ禍での財政支出の多くは日米欧とも家計や中小・零細企業への現金給付、いわば「バラマキ」であり、廃坑の寓話に通じる。効果はというと、米欧では需要回復が目立つ。対照的に日本では回復力が弱い。

 経済協力開発機構(OECD)の12月1日付の経済予測によると、昨年軒並みマイナスに落ち込んだ日米欧の実質経済成長率は、今年は財政拡張に後押しされて米国が5.6%増、ユーロ圏が5.2%増に転じるが、日本は1.8%増にとどまる。日本はバラマキ効果が弱いのだ。

当然、政府債務は膨張するが、10月のインフレ率が6%台に上昇した米国でも実質マイナス金利である。財政破綻リスクを示す国債金利はびくともしない。自国通貨建ての政府債務なら財政破綻しないという現代貨幣理論(MMT)学派を勢いづける。

 財政主導政策に死角はある。高インフレ率が収まらなくなれば、打つ手は増税など緊縮財政と金融の引き締めだ。景気は急激に落ち込み、株式など金融市場は大きく揺れるだろう。

 日本はどうか。2019年10月の消費税増税によって再発したデフレ病が新型コロナ禍でこじれている。国債金利はゼロ%以下に落ち込みかねない。言い換えると、それほど日本国債相場は安定し、財政破綻危機は起きようがない。ならば、脱デフレと長期的な経済成長持続に向けた投資を財政主導で進めればよい。詳しくは拙著「『経済成長』とは何か 日本人の給料が25年上がらない理由」(ワニブックスPLUS新書)を参照してほしい。

 グラフは日米ユーロ圏の財政赤字GDP比と企業設備、インフラなど固定資産投資の実質伸び率を対比させている。日本の投資のみが水面下に沈んだままだ。

 元凶を新型コロナに押し付けるわけにはいかない。1997年に慢性デフレが始まって以来、内需は萎縮しっ放しで、企業は国内を見切って中国や米国など対外投資を優先してきた。歴代政権は一時しのぎの補正予算で公共投資を追加しても、本予算では削減する緊縮路線を変えなかった。日本再生の意志薄弱なのだ。

 岸田文雄政権は「成長投資」を唱えるが、脱デフレを伴わないと、口先だけに終わりかねない。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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