
時代の流れをくんで生成AIのビジネス活用に取り組む企業は増えつつあるが、試験導入として少数ライセンスを購入したあと、活用のアイデアがあまり膨らまずプロジェクトが停滞するケースは珍しくない。
共通する悩みは「生成AIを、どの業務でどう使えば効果が出るのか分からない」というものだ。無償の生成AIツールを使ったことがある人なら、「質問に答えてくれる」「調べ物をしてくれる」「要約や翻訳をしてくれる」などのユースケースはすぐに理解できるだろう。一方で、有償の生成AIツール「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)は、オフィススイート「Microsoft 365」と連携してさまざまな業務の効率を高める使い方ができるものの、どの業務を生成AIに任せれば効率化につながるのかはケース・バイ・ケースで、ビジネスユーザーのナレッジが世に広まっていない段階だ。
試験導入の段階で、Copilotの機能検証やナレッジ習得をスムーズに進めるにはどうすればいいのか。Microsoft 365を安全に運用し、Copilotの全社普及と活用促進のプロジェクトをスムーズに進める秘策はあるのか。「Microsoft Base Nagano」の運営に携わり、Microsoft製品の導入から展開までの支援を多数手掛けるITベンダーのTOSYSに話を聞いた。
「お客さまの声を聞くと、Copilotを使ってみたい気持ちは強いものの『どのように活用したらいいか分からない』というお悩みを抱えられているようです。不正アクセスや情報漏えいなどのセキュリティリスクに不安を感じている声も目立ちます」。こう語るのは、TOSYSのクラウドサービス部門でセールスを担当する宮嶋真宏氏だ。長野県長野市に本社を置く同社は、2015年から「Microsoft Azure」およびMicrosoft 365のライセンス販売、導入支援、運用支援サービスに力を入れている。2022年5月からMicrosoft Base Naganoを運営し、長野県内の企業や行政機関に向けて、「信州クラウド」をキーワードにDX推進を支援。顧客は全国に広がっており、約8割は首都圏を含む関東エリアの企業だ。
Microsoftのソリューションを扱うITベンダーとして、TOSYSのクラウドサービス部門は早い時期からMicrosoft 365を利用していた。業務データは「Microsoft SharePoint」に置き、社内コミュニケーションとコラボレーションには「Microsoft Teams」を活用していた。そのためCopilotの利用はスムーズに始まった。
「正直なところ、Copilotを使い始めた当初は機能検証の意味合いが強く、どの機能が役に立つのかを技術目線で確かめることが主眼でした」と宮嶋氏は振り返る。しかしCopilotを使い込んでいくと、メンバーそれぞれの「便利な機能」「お気に入りの機能」がおのずと生まれてくる。そうしたナレッジをチームメンバーがTeamsに書き込み、部内で共有していった結果、「今では業務でCopilotを使うのが当たり前になりました」と宮嶋氏は語る。
部署を問わず好評なCopilotの機能が、メールクライアント「Microsoft Outlook」での下書き作成と、メール本文の添削だ。宮嶋氏は「Copilotのアドバイスに従って表現を直すことで、読み手に分かりやすいメールを送れるようになっていると思います」と話す。プロジェクト管理、情報検索、Teams会議後の議事録作成や要約の自動作成なども、クラウドサービス部門の全員が愛用している機能だ。
お気に入りの機能には部署ごとの個性が表れる。営業担当者は、「Microsoft Word」「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」で提案書や契約書を仕上げる前に、原案をCopilotで作成している。エンジニアは技術情報の収集と情報共有にCopilotを活用することが多いようだ。「エンジニアたちは、難しい技術用語や社内情報をCopilotに調べさせ、要約した結果を部内で情報共有しているようです」(宮嶋氏)
Copilotの導入効果について、TOSYS社内ユーザーを対象にアンケート調査や管理ダッシュボードの利用状況を確認したところ、ポジティブな効果を確認できたという。「社内ユーザーが最も使っている『Teamsの情報共有と情報検索』の作業は、1人当たり週に約2時間の時間削減がみられました」と宮嶋氏は説明する。会議前後の作業(事前資料の作成、会議後の議事録作成、タスク整理)についても、1人当たり週に約3時間の時間短縮がみられたそうだ。
TOSYSはこれらのナレッジを、さまざまなサービスとして顧客に還元している。導入前にCopilotの使い勝手を試したい企業向けには「Microsoft 365 Copilot最速体験ワークショップ」を提供している。これは定員5人、1社単独開催のワークショップだ。Microsoft Base Naganoで開催する集合セミナー形式か、オンラインセミナー形式が選べる。社内研修のような雰囲気で、納得いくまでCopilotの使い勝手を体験できるだろう。
ワークショップは午前中に開催し(2時間)、その中でデモンストレーションやハンズオンでのレクチャーを実施。午後からは、参加者がワークショップ内で使用したアカウントをそのまま貸し出し、当日中は自由にCopilotの機能を試すことができる。ハンズオンセミナーでは「社内の旅費規定を探してください」「『旅費規定(第XX版)2022.4.1.docx』を参照して、品川区に出張した際の宿泊費を教えてください」など、よくあるシーンを想定した文書作成のプロンプトを試せるため、実務上の利便性を実感しやすい。ワークショップ運営を担当する桜井頼子氏(クラウドサービス部門)は、「ワークショップの申込時に、お客さまがどのような業務でCopilotをお使いになるかをヒアリングし、それに合わせたプロンプトや使用法をご紹介しています」と説明する。
Microsoft 365 Copilot最速体験ワークショップのサービス開始後、15社以上の利用企業全てから好評を博し、ワークショップをきっかけにMicrosoft 365ライセンスの契約に至った事例もあるという。桜井氏は「ワークショップを始めた当初は『職場の全員が使いこなせるようになるかが課題』といったご意見をいただいていましたが、最近は『Copilotで業務効率が高まると感じた』『AIが出してくるアイデアは参考になった』と前向きな反応がほとんどになりました」と語る。Microsoft 365 Copilot最速体験ワークショップはエンドユーザー向けの内容だが、IT管理者向けに「導入前準備に関するセミナー」も実施している。
Microsoft 365はすぐに使い始められるクラウドサービスだ。しかしデータのアクセス制御やプライバシー設定が不十分だと、Copilotを導入した際に思わぬリスクに直面する。特定の人しかアクセスすべきでないデータには制限をかけておかないと、生成AIを通じて誰もがその情報にアクセスできてしまう。TOSYSはMicrosoft 365の導入と運用に関連した幅広いサービスを用意しており、組織内の各種データのアクセス権限やデータ保護の設定を見直し、機密情報管理の強化を支援する「コンプライアンス可視化アセスメント」サービスを提供している。
情報漏えいや不正アクセス対策としては「Microsoft 365 E5 Security(EMS)導入サービス」がある。情報漏えい対策サービス「Microsoft Azure Information Protection」(AIP)や、CASB(Cloud Access Security Broker)製品「Microsoft Defender for Cloud Apps」などを組み合わせ、TOSYSのエンジニアがアカウントやデータを守るためのシステム設定を支援するものだ。
導入から環境構築、運用までをTOSYSに丸ごと任せられるマネージドサービスもある。その一つが、Microsoft 365を対象にした「マネージドMicrosoft 365サービス」だ。TOSYSの知見を生かしたMicrosoft 365の普及支援や、サービス稼働後のヘルプデスク運営などの支援を提供するもので、従業員エクスペリエンスプラットフォーム「Microsoft Viva」の他、Microsoft 365 Apps(Word、Excel、PowerPointなどのアプリケーションの単体利用)もカバーしているのが特徴だ。
Microsoft 365 Copilot関連の支援事業と並行して、TOSYSはAI活用全般の取り組みにも力を入れている。高度なAI活用に対するニーズには、「Azure OpenAI Service」ベースでアプリケーションを開発するための技術支援や、Azure OpenAI Serviceのマネージドサービスを提案している。
TOSYSはこれからもMicrosoft Base NaganoでAI活用を支援しつつ、関東信越北陸のDX拠点と位置付けて企業のDX推進を後押しする。Microsoftのクラウドサービスに限らず、Web会議システム「Microsoft Teams Rooms」、ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens 2」などの最新技術を紹介するセミナーや体験型イベントを何回も実施してきた。ユーザー企業の交流コミュニティーを立ち上げたり、他のMicrosoft Base拠点と協業したイベントを企画したりと、さまざまな構想を持っている。
「生成AIの進化はとても速く、文章やイラストだけでなく動画の生成も可能になっています。今後もさらに精度や機能が向上するはずです。業務で生成AIを使うのが当たり前になる時代が間もなく到来するでしょう。後れを取ることがないよう、お客さまがビジネスで生成AIを活用できる環境整備をトータルで支援していきます」(宮嶋氏)
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年5月8日